NIMS、デジカメでX線を計測して元素分析・イメージングを行う新技術を開発

物質・材料研究機構(NIMS) 先端材料解析研究拠点 高輝度光解析グループの桜井健次グループリーダーと趙文洋ジュニア研究員は、通常の可視光用途のデジタルカメラをほぼそのまま用いながら、画像処理によりX線スペクトルを測定し元素分析や元素イメージングを行う新技術の開発に成功した。この成果は、英科学誌「Scientific Reports」に3月31日付で掲載された。

(左)測定のサンプルに用いた皿の写真、(右)同じカメラを使いX線のスペクトルを取得したもの

物質はさまざまな元素から構成されており、その組成によって物理的・化学的性質が大きく左右される。物質の理解や新材料の開発のためには、含まれている元素の種類や量を分析することが重要となっている。物質にX線を照射した際に出てくる蛍光X線のエネルギーから元素の種類が、その強度から量がわかることが知られている。蛍光X線分析を行うためには、専用のX線分光器やX線検出器が用いられ、通常の分析に加えてどの元素が試料内のどの場所にあるかを調べる場合には、より高価な検出器や光学素子が必要となる。

同研究チームは、光学顕微鏡などに使われている可視光用のCMOS素子を搭載したデジタルカメラをほぼそのまま利用して、蛍光X線による元素分析やイメージングを行う方法を見出した。まず、レンズとセンサの間にX線のみを透過させる不透明な薄い窓を取り付け、試料から出てくる蛍光X線がこの窓を通ってCMOS素子に入ると電荷が作りだされる。その電荷の数を瞬時に計測すると、入ってきたX線のエネルギーを知ることができる。ただし、生じた電荷は複数の画素に別れて記録され、時には失われてしまうこともあるという。そこでチームは、電荷の複数画素への分散状態を調べ、本来持っていた電荷量と入射位置の両方を画像処理により復元する方法を確立した。これにより、信頼性の高いX線スペクトルが安定に取得可能になったという。実際に、今回開発された手法で皿を蛍光X線分析したところ、青の顔料が塗られている表側からのみコバルトが検出され、裏側からはコバルトは検出されなかったということだ。

安価で入手が容易な可視光用のデジタルカメラをX線分析に用いることにより、これまで以上に手軽に元素分析が行えるようになると期待される。X線分析は一層広い分野でいつでもどこでもユビキタスに使えるようになると期待されるという。

今後、研究チームは、デジタルカメラによって取得した蛍光X線スペクトルによる元素分析、元素イメージング技術をさらに高度化し、一層短い時間での動画像の計測を行う試みを進めていくという。その結果、いままで困難だった非常に多数の試料の蛍光X線スペクトルを迅速解析することや、化学反応などにおける元素の移動の過程を研究することも可能になるかもしれないとしている。



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