東邦大学医学部はこのほど、「アルツハイマー病と女性ホルモン、BMIの関係」についての研究結果を明らかにした。同研究は、本間尚子准教授らの研究グループが行ったもの。
アルツハイマー病は超高齢社会の日本でも増加しており、社会問題ともなっている。男性よりも女性が発症することが多いが、「閉経後に増加」「閉経後女性の血中エストロゲンレベルは男性以下になる」などから、血中エストロゲンレベルの低下がアルツハイマー病につながる可能性が指摘されている。
女性ホルモンの代表であるエストロゲンがアルツハイマー病の予防につながる可能性はかねてより指摘されているが、これまでの研究は疫学的あるいは実験的なものが多く、ヒトの脳組織を使った研究は限定されていたとのこと。
そこで今回、研究グループらは、アルツハイマー病女性の大脳前頭葉組織について調べた。すると、アルツハイマー病女性の前頭葉白質組織では、エストロゲン受容体の一つであるER-βが減少していることを確認。白質での ER-βを通じたエストロゲン作用の伝達障害が、アルツハイマー病に関係している可能性が示唆されたとのこと。
また、脳内エストロゲン濃度には BMI(体重と身長の関係から人の肥満度を示す体格指数)が強く影響していることも明らかになった。閉経後は体内の脂肪組織でエストロゲンが多くつくられるため、BMIと血中エストロゲン濃度は正の相関がみられる。
今回の解析では、BMIは血中エストロゲン濃度だけでなく、脳内エストロゲン濃度でも強い正の相関関係にあることがわかった。このため、過度のやせすぎ(BMI17.5未満)は脳のエストロゲン濃度維持という点で、好ましくないことが示された。
大豆胚芽に特に多く含まれるフラボノイドの一種「イソフラボン」は、エストロゲン受容体の一つであるER-βに結合してエストロゲン作用を発揮することがわかっている。「今後、より多くの研究によりエストロゲンとアルツハイマー病の関係が明らかとなれば、食生活改善を通じた草の根レベルでの予防も可能となっていくかもしれない」と同グループはコメントしている。