女性は喫煙による心臓発作リスクが男性よりも高いという研究が報告された

日本たばこ産業の「2016年全国たばこ喫煙者率調査」によると、国内の男性喫煙率は全体の29.7%、女性は同9.7%で、男女合わせた喫煙人口(推計値)は2,027万人におよぶという。喫煙可能人口の約5人に1人がたばこを吸っている計算になる。

喫煙にはさまざまな疾病リスクが伴うのは広く知られているが、ある特定の疾患に対しては男女によってその可能性がかなり異なるようだ。

海外のさまざまなニュースを伝える「MailOnline」にこのほど、「喫煙と心疾患の関係性」にまつわる記事が掲載された。最新の研究発表によると、喫煙している男女では心臓発作のリスクにかなりの差があるとのこと。

今回報告された研究は、急性のST上昇型心筋梗塞治療中の約3,000人の患者を対象に、シェフィールド大学とサウスヨークシャー胸腔鏡センターによって実施された。調査結果を詳しく調べたところ、50歳未満の喫煙女性は非喫煙女性に比べて心臓発作に罹患するリスクが約13倍高いということが判明。

一方、50歳未満の喫煙男性が非喫煙男性に比べて心臓発作になるリスクは8.5倍となっており、女性喫煙者よりも有意に低かった。従来の研究では「喫煙が心臓発作のリスクを高める」と言われていたが、今回の研究は喫煙と心臓発作の関係に男女差があることを示唆している。

周期的な女性ホルモンがある程度の心臓血管保護作用を提供すると一般的には考えられているため、シェフィールド大学病院の心臓内科医であるEver Grech医師は、女性の方が心臓発作リスクが高かったという事実に驚きを隠せない。

また、閉経を迎えて女性にホルモンの保護が存在しなくなった場合、男女の喫煙者間における心臓発作リスクの差はさらに大きくなることも明らかになった。心臓発作のリスクは50歳未満の喫煙女性が最大だが、リスクの男女差は50歳以上で最大になっているという。

50歳から65歳の女性喫煙者は、非喫煙者より心臓発作に罹患するリスクは11倍高いが、同年代の男性喫煙者を同様に比較した場合、そのリスクは4.6倍にとどまる。このような男女差が生じる原因はまだ解明されていない。

今回の調査では、年齢や性別に関わらず喫煙者が急性心臓発作に罹患するリスクは非喫煙者の5倍にもなることも判明。Grech医師は「私たちのこれまでの研究によると、心臓発作の50%はダイレクトに喫煙が原因となっています。ということは、予防策もすぐにわかります」と話し、禁煙こそが最大の心臓発作予防策だとしている。

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記事監修: 杉田米行(すぎたよねゆき)

米国ウィスコンシン大学マディソン校大学院歴史学研究科修了(Ph.D.)。現在は大阪大学大学院言語文化研究科教授として教鞭を執る。専門分野は国際関係と日米医療保険制度。