デルタ航空(本拠: アトランタ)は現地時間の3月28日、アメリカジョージア州アトランタにあるデルタ航空博物館の最新展示物として、ボーイング747-400型1号機(登録番号: N661US、機体番号: 6301)を改装した「747エクスペリエンス(747 Experience)」を披露した。この展示は、"空の女王"の異名を持った歴史的航空機を称えるために企画された。

ボーイング747-400型1号機を改装した「747エクスペリエンス」を披露

新たな時代の幕開けを告げる展示

同日朝に開催されたオープン記念式典では、デルタ航空社長のグレン・ホーエンスタイン氏をはじめ、ジョージア州知事、アトランタ市長、ボーイング社幹部、歴代ユニフォームを着用したクルー等が参加。多くの報道陣・従業員・関係者らの前で、記念のテープカットを行った。

デルタ航空博物館の館長兼会長のジョン・ボートライト氏は、「747エクスペリエンスは、この象徴的な飛行機の歴史を紹介する展示です。747-400型機は初めて旅客運航に使用された1989年当時、テクノロジーの発展がもたらした驚くべき飛行機、まさにテクノロジカル・ワンダー的存在でした。そして今後もこの展示と共に、しばらくテクノロジカル・ワンダーであり続けるでしょう。この展示に触れた現役世代、そして将来の世代の人々にとって、学びを提供し、航空の世界に携わるきっかけになればと思います」とコメントしている。

また、デルタ航空のグレン・ホーエンスタイン氏は、「747型機初号機の展示開始は世界中でベストな航空サービスを提供し続けるというデルタ航空の旅路のひとつのステップにすぎません。このような美しく重要な飛行機を退役させてしまうという寂しい思いを持ちながらも、同時に新たなチャプターへと踏み出す機会でもあります。最新鋭の機材を導入し、機内の快適性と充実したアメニティを追求し、環境に優しく、より明るい未来へと導くものです」とコメント。747エクスペリエンスはひとつの時代の終わりを象徴するだけでなく、新たな時代の幕開けをも示すものであることを印象付けた。

オープン式典でスピーチするデルタ航空社長のグレン・ホーエンスタイン氏

26年間で地球と月を250往復

「空の女王(Queen of the Skies)」として知られるボーイング747型機(通称ジャンボ機)は、世界で最も人気のある航空機のひとつ。機体前方に、こぶ(hump)とも呼ばれる独特な2階部分があることで広く知られている。デルタ航空では機材の更新を進めており、747-400型機材は2017年末で退役させ、より燃料効率のいい最新型機材に移行させる予定となっている。同型機は全て退役を予定しているが、デルタ航空博物館、デルタ航空基金、デルタ航空、従業員があわせて数百万ドルをかけて実現させた747エクスペリエンスの展示を実現した。

747-400型1号機は、2015年9月9日のホノルル発アトランタ行きのデルタ航空便を最後に退役

今回展示する6301号機は、B747-400型機のローンチカスタマーであったノースウエスト航空によって、1989年12月に初めて運航され、2015年9月9日のホノルル発アトランタ行きのデルタ航空便を最後に退役した。東京、名古屋、大阪、ホノルル、ソウル、マニラ、台北、アムステルダム、テルアビブなど様々な都市を飛行し、26年間の飛行距離は、地球と月を250往復する距離に相当する6,100万マイル(約9,800万km)にもおよぶ。

オープン記念式は、同時に当時のデトロイトベースのノースウエスト航空(現在はデルタ航空)のパイロットたちの偉業を改めて思い起こす場となった。2002年に同機材がデトロイトから成田空港に向かうフライト中に起きた深刻な技術的な問題にも関わらず、機体を無事に着陸させた機長、副操縦士らも式典に参加した。

747-400型1号機とのつながりが深い機長、副操縦士らも式典に参加

フランク・ゲイブ機長は、「この飛行機は多くの理由によりすばらしい、ファンタスティックな機材です。象徴的であり、信頼性も高い。747-400型機の操縦には、たくさんの懐かしい思い出があります。デルタがこのような形でこの飛行機を保存してくれたことは、本当にすばらしいことです」とコメント。ゲイブ機長は18年間同機材に乗務している。

シップ6301は退役後の2016年春に、旅客サービス部門と整備部門の協力により、永住の地となるデルタ航空本社内にあるデルタ航空博物館に移動された。担当した整備部門のクリス・ブラックモンは、「飛行機の空港から博物館への移動、そして展示の完成は、複数の部門が協力して成しえたもので、チームワークがあってこそ実現できたことです。道路を横断して移動させ、使わない部分を取り外し、内装を変更させました」と述べている。

クルーレストなどはそのまま、床下なども特別展示

展示を開始した747エクスペリエンスでは、機内の一部は座席や荷物棚が取り外され、ビジターは機内を歩きながらデルタ航空の機材改装チームが何カ月もかけて完成させた展示を楽しむことができる。ビジネスクラスの一部、エコノミークラスの一部エリア、クルーレストと呼ばれるパイロットや客室乗務員の休憩場所などはそのまま残された。

747エクスペリエンスは空間としての貸し出しにも対応する

展示を訪れる人々は、機内に設置されたスクリーンやボードで飛行機の歴史を学べるほか、翼の上の歩く感覚を味わえる「ウィング・ウォーク」や、コックピット、2階部分のビジネスクラス「デルタ・ワン」の座席など、さまざまな箇所を見学できる。また、機内は見学のみならず、企業の集まりやディナーイベント、撮影用のセットとしても貸し出しも予定している。

むき出しの天井や空調のダクトなど、普段の飛行機では見ることができない設備も展示として公開している

改修されたエリアでは、普段は見ることがない飛行機の床下や壁の向こう側など、舞台裏を見られるようなユニークな展示も用意。むき出しの天井やガラスの床から客室の下の構造やワイヤー類、空調のダクトなど、旅客機の必須設備をのぞくことができる。壁には747型機の歴史や達成した記録、写真や統計資料を紹介するパネルや、画像・映像を映し出すマルチメディアディスプレイが完備されている。