科学技術振興機構(JST)は3月24日、大阪大学(阪大)の研究グループが、スマートフォン(スマホ)やタブレット端末に録音された音から、個人の睡眠パターンを機械学習により可視化・評価する人工知能(AI)技術を開発したと発表した。

同成果は、阪大 産業科学研究所の福井健一 准教授、同大 歯学研究科の加藤隆史 教授らによるもの。詳細は、米国人工知能学会が発行する会議録「AAAI2017 Workshop Proceedings」にて公開された。

睡眠中の歯ぎしりや、エアコンの音、外を走る自動車のロードノイズ、話声などのいわゆる「睡眠環境音」には、豊富な情報が含まれていることが分かってはいたものの、室内外のすべての音が含まれるため、ノイズの処理や歯ぎしりや寝返り、いびきなどの「睡眠関連音」の識別が難しく、活用が進んでいなかった。

今回、研究グループは、複数の機械学習手法を組み合わせることで、高精度に睡眠関連音を抽出し、睡眠関連音ごとの特徴に応じて、それらを2次元的に自動マッピングする手法を考案。実験の結果、睡眠パターンの可視化については、睡眠時における脳波、呼吸、脚の運動、あごの運動、眼球運動(レム睡眠とノンレム睡眠)、心電図、酸素飽和度、胸壁の運動、腹壁の運動などを記録する「睡眠ポリソムノグラフィ(PSG)検査」で推定された睡眠段階と高い関連性があることが示されたという。

左が睡眠中の音から機械学習により個人の睡眠パターンを視覚化・評価する技術の流れのイメージ。右の上段が今回開発された技術による睡眠パターンの可視化結果、下段が睡眠ステージ。上段の縦軸は音の周波数特徴に基づいて類似する音同士が近くに配置されているという (出所:JST Webサイト)

実験は10名の被験者で実施。いずれも関連性を確認したとのことで、研究グループでは今回の成果を応用することで、快適な睡眠のパーソナル化が可能となるとしており、家庭で手軽に睡眠を自己管理するスマホやタブレットのアプリケーションソフトが開発されれば、睡眠障害の早期発見や健康増進などにつながることが期待されるとコメントしているほか、歯ぎしりやいびきなどで示される個人の睡眠パターンに応じた照明やエアコンの制御などを可能とする技術への活用なども期待できるとしている。