NICT、サルとヒトの視覚情報を伝える線維束の類似性をMRIIデータで発見

情報通信研究機構(NICT) 脳情報通信融合研究センター(CiNet)の竹村浩昌特別研究員(JSPS特別研究員)をはじめとする研究グループは、米国やドイツの研究機関の協力で計測されたサルの脳を対象としたMRIデータを調べた結果、視覚情報を伝える線維束がサルとヒトのVertical Occipital Fasciculus(VOF)の間に類似性のあることが明らかになったと発表した。この研究成果は、神経科学の国際科学誌「Cerebral Cortex」(電子版:日本時間3月23日)に掲載される。

拡散強調MRIによって計測されたサル(左)とヒト(右)の視覚情報伝達に関する白質線維束(出所:情報通信研究機構Webサイト)

今回、同研究グループは共同で行った、サルの脳を対象とした拡散強調MRIの計測では、サルの視覚情報処理に関わる線維束の位置や三次元の全体形状を計測し、サルとヒトの研究の間にあるギャップを埋ることができないかという点に注目し、サルの脳を対象にして取得された高解像度の拡散強調MRIデータを解析し、ヒトの拡散強調 MRIデータの解析結果と比較した。その結果、前頭葉と視覚処理に関わる場所を結ぶ線維束を除き、ヒトと共通する線維束がサルの脳にも見られ、サルの脳は視覚情報の処理に関わる線維束に関してはヒトの脳とある程度似ているという結果を得たという。

ヒトの脳は近年の研究でVOFと呼ばれる線維束が、視覚野の上側(背側)と下側(腹側)を結ぶことが知られてきたが、サルの脳では1881年にドイツのCarl Wernickeによって二次元のスケッチで報告されていたものの、三次元の形状は詳しく知ることができなかった。また、当時の研究手法では同スケッチを正確に再現できず、以降は136年間も研究されていなかったという。

今回の研究で、これまで長きにわたり報告されてこなかったサルの視覚野の上側(背側)と下側(腹側)を結ぶ線維束が拡散強調MRIデータから発見された。その位置は1881年の Wernickeによる記述と非常に類似しており、136年の時を経て最新のMRI計測によってWernicke のスケッチを初めて再現することに成功したということだ。

さらに、サルとヒトのVOFの終点の近くにある脳領域を比べた結果、サルとヒトの両方でV3A 野やV4 野といった類似した領域がVOFの終点に近いということがわかり、今回再発見したサルの線維束がヒトのVOFと相同する線維束であることが明らかになった。

近年はVOFが視覚認知機能の個人差や弱視などと関わっている可能性が指摘され始めていることから、このたびヒトとサルのVOFとの類似性が明らかになったことで、今後は、サルとヒトを対象とした両方の計測法の利点を生かしてVOFと脳の病気の関わりやVOFの組織の健康状態と視覚認知機能の関係を詳しく調べていくことが期待できるとしている。

(左)今回のMRIデータ、(右)1881年、Wernickeによるスケッチ(出所:情報通信研究機構Webサイト)



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