東北大学は3月21日、糖尿病の内服薬であるSGLT2阻害薬によって難病に指定されている脂肪萎縮性糖尿病が著明に改善したことを発表した。

同成果は、東北大学病院糖尿病代謝科 今井淳太講師、川名洋平医師、片桐秀樹教授らの研究グループによるもので、3月21日付けの米国科学誌「Annals of Internal Medicine」に掲載された。

脂肪萎縮症は先天性あるいは薬剤などにより後天性に発症し、重症かつ通常の治療では改善が難しい糖尿病を呈する疾患。脂肪萎縮症のなかでも先天性全身性脂肪萎縮症は、特に重症な糖尿病を呈する。皮下注射によるレプチン補充療法が有効な治療法となるが、高価であり、また皮下脂肪がないことによる注射時痛で治療継続が困難な場合もある。

今回、同研究グループは、長期にわたってコントロール不良な糖尿病が持続していた先天性全身性脂肪萎縮症に対して、SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンを投与したところ、脂肪肝が減少し、糖尿病、インスリン抵抗性が著明に改善することを明らかにした。

SGLT2阻害薬は、2年前から日本で使用可能になった経口糖尿病治療薬で、尿中へのブドウ糖排泄を促進することにより血糖値を低下させる作用を有する。脂肪燃焼による内臓脂肪減少効果が報告されており、同研究グループは、そのことがインスリン抵抗性、糖尿病の改善につながったと考察している。

SGLT2阻害薬の投与は、通常診療で用いられる保険適応となっている治療であり、比較的安価に行うことができるうえ、内服薬であるため注射時痛もないことから、同研究グループは今回の成果について、脂肪萎縮性糖尿病に対して、病態改善メカニズム、医療経済、治療アドヒアランスの各面からきわめて有用であり、有望な治療選択肢となることが期待されると説明している。

糖尿病状態の指標であるHbA1cの経過。以前から行われていた内服薬治療のみでは、長期にわたってコントロール不良な糖尿病が持続していた先天性全身性脂肪萎縮症に対して、SGLT2阻害薬であるイプラグリフロジンを追加投与したところ、脂肪肝が減少し、糖尿病、インスリン抵抗性が著明に改善した (出所:東北大Webサイト)