カシオ計算機は、国際コンテスト「ISBIチャレンジ2017」において、皮膚疾患の自動判別に関する部門にて1位を獲得した。受賞した技術は、同社が2015年6月からスタートしている、無料のダーモスコピー(dermoscopy)学習用クラウドサービス「CeMDS(CASIO e-Medical Data Support)」の将来的なサービス拡充を視野に入れて開発したもの。

CeMDS(CASIO e-Medical Data Support)

ダーモスコピーは、皮膚の腫瘍やホクロなどの色素病変を、「ダーモスコープ(dermoscope)」と呼ばれる特殊な拡大鏡で観察する検査方法。昨今、皮膚科の診察現場などで大変注目されている手法だ。

CeMDSは、病変の構造や血管の分布状況を顕在化させる画像解析機能などにより、ダーモスコピーを効率よく学べる学習用プログラム。サービス開始以来、所見付き画像と所見にもとづく設問を日替わりで出題する「診断トレーニング」機能や、初学者向け学習コンテンツの追加など、サービス内容を拡大してきた。

さらなるサービス拡充に向け、カシオは2016年4月から信州大学と共同で皮膚疾患のコンピュータ診断支援システムの技術開発をスタート。新しい技術は、既存の深層学習(ディープラーニング)アルゴリズムを基礎として、症例画像を大量に読み込んで機械学習することで、高精度な皮膚疾患の診断サポートを実現しようというものだ。

ISBIチャレンジ2017の参加にあたっては、カシオの画像変換技術を活用。症例画像の色や明るさ調整といった画像処理による機械学習の性能向上、および識別対象の異なる識別器を組み合わせるアンサンブル学習の採用など、機械学習の効率を高める工夫を施した。この結果、コンテストではトップスコアの「0.911」(満点は1.000)を獲得。

カシオは今後、この診断サポート技術の精度をさらに高めて、CeMDSに採用する計画。「皮膚科医がダーモスコピー診療する際に、可能性のある病名を提示するなど、医師の診断補助となるサービスの構築を目指す」とコメントしている。

なお、ISBIチャレンジ2017は、米国に本部を持つ電気工学・電気工学技術の学会、「IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers,Inc)」の信号処理分科会と生体医工学分科会の共催による、年次大会「ISBI(International Symposium on Biomedical imaging)」で実施されるプログラムの1つ。

ISBIチャレンジ2017では、4つのコンテストが実施された。カシオはそのうち1つ、ISIC主催の「メラノーマ検出のための皮膚病変解析(Skin Lesion Analysis Towards Melanoma Detection)」に関するコンテストの、「皮膚疾患の自動判別部門(Part3:Lesion Classification)」に参加しての受賞となった。

また、ISIC(The International Skin Imaging Collaboration)は、ダーモスコピー検査の分野の標準化を進め、産業を活性化させる目的で、産学のトップレベルの関係者によって運営されているプロジェクトとなる。