日立製作所は3月16日、独フラウンホーファ研究機構製造技術・自動化研究所およびハンガリー科学アカデミー計算機自動化研究所と共同で、数量や加工条件などの重要情報を秘匿し、企業間でのセキュアな生産設備融通を可能にする技術を開発したことを発表した。

マスカスタマイゼーションの進展に伴い、製造業では多様化する顧客ニーズに応じて製品をタイムリーに生産するためにIIoTの活用などが求められている。そうした中、日立は2014年9月よりIEC Market Strategy Board「Factory of the future」プロジェクトに参画し、シェアリングエコノミーのコンセプトを活用した新しい生産システムとして、生産設備の利用権を必要な時に必要な時間だけ企業間で融通しあうことで、多様な顧客ニーズへの対応と高稼働率な生産体制の両立を可能とする「クラウドマニュファクチャリング」を提案してきた。

今回、日立と2研究所は、このクラウドマニュファクチャリングの実現性検証を共同で実施することで、生産に必要な数量や加工条件などの重要情報を暗号化し、生産管理システムと複数の企業の生産設備をセキュアに接続する技術の開発に至ったという。具体的には、設備貸与者と利用者の間での設備利用契約や生産計画に基づき、秘匿すべき重要情報を決定し、利用者が暗号化を実施。暗号化された重要情報は、その他の生産に必要な情報とともに一時的に接続された貸与設備に送信され、生産を行うが、生産終了後に、これらの情報が無効化されるという仕組みとなっている。

日立では、同技術により、設備利用者の重要情報を秘匿しつつ、設備利用者はあたかも自社の生産設備のように使用することができるようになるため、企業間でのセキュアな生産設備融通が可能となると説明しているほか、同技術をIoT対応産業用コントローラに搭載し、製造ラインを模したテストベッド環境において生産管理システムと生産設備の相互接続テストを行うことで、クラウドマニュファクチャリングの実現性も確認したとしている。

なお、クラウドマニュファクチャリングに基づく生産システムは、2015年10月発刊のIEC白書において、「Crowdsourcing Platform(クラウドソーシング・プラットフォーム)」として採択されているほか、今回の成果については、日本の経済産業省と独経済エネルギー省が、製造業におけるIoT化やIndustrie4.0の協力を推進する「日独IoT連携」共同プロジェクトのユースケースとして登録しているという。