国立情報学研究所(NII)は3月17日、コンテンツ科学研究系の越前功 教授らによるの研究チームが開発した指紋盗撮防止手法「BiometricJammer」の視覚的違和感を軽減して利便性を向上させた改良手法を3月20日より独ハノーバーにて開催される国際情報通信見本市「CeBIT 2017」にて公開することを明らかにした。

デジタルカメラやスマートフォンのカメラの高画素化/高性能化に伴い、これまで接触式の指紋センサでしか読み取れなかった指紋情報がそうしたカメラを使って撮影された画像からでも復元できることが指摘されており、不正ログインやなりすましなどに悪用される可能性が 生じるようになってきた。

同研究チームも2016年に、一般に市販されているデジタル一眼レフカメラで3mの距離から撮影した指の画像から指紋認証に必要な指紋情報の抽出が可能であることを示しており、こうした抽出を防止する指紋盗撮防止手法「BiometricJammer」を提案していたが、従来の手法では、指紋の特徴点の検出を妨害するように考えられた幾何学的な模様(ジャミングパターン)をステンシルシートを使って指先に転写する必要があった。

今回、改良された手法は、従来の幾何学的なジャミングパターンに変わって、擬似的に記された指紋パターンをジャミングパターンに用いることで、装着した際の視覚的な違和感を低減することを可能にしたほか、装着方法そのものも、従来必要であったベース素材の塗布を不要化することで、より簡便な装着を可能にしたという。

なお、改良されたジャミングパターンは従来同様に、撮影された画像から指紋を認識することを不能にしながら、接触式の指紋センサで正常に認識することが可能であるという。

下段が従来手法。幾何学的なパターンを指に装着する必要があり、見た目の違和感が強かった。上段が「CeBIT 2017」に出展される予定の改良手法で、疑似指紋パターンを使用することで、見た目の違和感を抑えることができるようになった。右の写真はともに指紋の特徴点抽出のために指紋を二値化した画像だが、いずれの画像からも指紋の認識はできないという (出所:NII Webサイト)