シシド・カフカが語る新作『DO_S』:ドラムとヴォーカルの関係、音楽に還元される芝居

シシド・カフカが語る新作『DO_S』:ドラムとヴォーカルの関係、音楽に還元される芝居

シシド・カフカがミニアルバム『DO_S』をリリース。彼女流の“若者への応援ソング”というコンセプトのもと作られた6曲は、聴けば背筋が伸びるような、活を入れられるような、そんな曲ばかりだ。ここでは、本誌掲載インタヴューのロングバージョンを公開する。

―ティーザーでは"男子は正座で聞きなさい"と活を入れられるミニアルバム『DO_S』ですが、タイトルの意味は?

『DO_S』の"S"の意味は何でもいいんです。昨年のツアータイトルも"Theatre Kavka『DO_S』"としていて、その時の"S"は単純にドSでした(笑)。周囲からSとか、相談事をしたら"何悩んでるのよ!"って言ってくれそうとか、そういうイメージで思われることが多くて。実際は全くそういう人間ではなくて、相談されたら"ヨシ、じゃあどこから解決していこうか"って一緒に悩んでしまうタイプ。ただ、そういうイメージを持たれているのではあれば、そして、そういうイメージを求めてライヴに来ていただいているのであれば、あえてこっちもドSに振って、そういうステージを作ったら面白いんじゃないかというところから始まっていて。だから演出家さんと脚本家さんをつけて、まあ、ドSとまでいかなくても、"気風のいいお姉さん"な演出をしてもらったんです。

―では今回はその流れを汲んでいる?

そうですね。ストーリー性があるものを作ろうというところから始まったコンセプトアルバムなんですが、決してドSな面だけで言葉を発している曲たちなわけではなくて。このアルバムを聴いて、みんなが"DO"する、動き出す、そんなきっかけになればいいなっていうのがあったので、"S"は、シンプルでも素直でも何でもよくて、聴いてくれた人が何かに対して素直に一歩を踏み出せるようなきっかけになれたらいいなっていう想いを込めての『DO_S』。いろんな角度から人の背中を押せるような曲を作りました。

―シシドのSかと思いました(笑)。

もちろん、私みたいになりたいって思ってくれるなら、DOシシドでもいいです(笑)。

―リード曲『タチアガレ』は、まさに迷っている人を奮い立たせてくれるようなストレートな歌詞ですね。

作詞は私の名付け親でもある渡辺潤平さんなんですが、ディスカッションをたくさん繰り返した時に、最近の若い子たちへ思うことの共通部分があって、そこから歌詞を書いてもらいました。私がひとりで書いたら、"まあ、人それぞれあるからね"みたいに感じになりかねないので、さすが潤平さんだなと。あえてのSイメージで振り切ってしまった方がわかりやすいですし。

―ドラムに関しては?

4つ打ちでドンドンドンドンという音が入っているんですが、いい意味であまりドラムが目立たないというか。ダンスサウンドでもあるので、機械で作られる音に対して、生音のドラムのアプローチはどうしようかと自分で考えました。

―ドラムのアプローチやアレンジはいつもどのようにしているんですか?

最近、いろんな作曲家さんが携わってくれていますけど、かなり作り込まれた状態で提案されるので、異論がないときはだいたいそのままです。でも自分の手癖とか、こっちの方がいいなと思った時は相談してアレンジしたり。ライヴでももちろん変わっていくので、最終的には音源通り叩いていない曲の方が多いですね。

―『僕が僕であるということ』はご自身で作詞されていますね。実体験を反映しているのかなと思いました。

これは自分が若かった頃、どうしても前を向けなかった当時のことを思い起こして書きました。私が話している相手側の男の子目線の詞ですけど、内容は私自身がデビューが決まらずバイトをしながら生活をしていた時の鬱屈した感情です。今、思い返すとあの時期が何に対しても素直になれなかったんじゃないかな。

―今は、活動していく中でそうした感情が消えていったからこそ詞にできたという面も?

消えてはいないですね。書くことによって浄化されるとか整理されるっていうことはありますけど、今はやっと自分なりのものの見方や努力の仕方がちょっとずつわかってきている途中という感じです。

―『拳と花束』もシシドさん作詞ですが、どんな時にできた曲ですか?

"Cool girl""Cool guy"という言葉が音にハマったことからできた歌詞で、そんなふたりの物語の楽曲です。最近はかっこ悪いところを見せるのがいやだっていう子が多い気がしているんです。恋愛でいうと、女性にとって男性がかっこつけてくれることはもちろん大切だけど、自分との関係において、どれだけかっこ悪くなってくれるかっていうこともけっこう重要だなと思うんですよね。

―確かに。

そういう意味で、プライドなんか捨てて、とりあえずかっこ悪い姿も見せてみたら?っていう、そんな歌です。どれだけかっこ悪くても、なりふり構わず必死に自分に対しての気持ちを表してくれたらこちらの感情も動くだろうし。実際、そこ、かっこつけるところじゃなくない!? って何度か思ったこともあるので(笑)。恋愛に対しても仕事に対しても。

―さっき言っていた『DO_S』の、シンプルさや素直さというところにも繋がるのかもしれないですね。

そうですね。何が大切なのかをよく考えれば、かっこいいかかっこ悪いかはどうでもいいことになってくると思います。

―タイトルも印象的です。

イメージが対極にあるものがふたつ並ぶとインパクトがあるじゃないですか。歌詞にも出てきますが、生きていく上で両方とも大切。ガッツも必要だし、でも一歩下がって、跪いて花束を渡すような精神も必要だし。

―『3.2.1・・・CUT』は、具体的なフレーズがたくさん出てきて、ユニークですね。

(渡辺)潤平さんに書いていただいたんですが、ストーリー調だったら面白いねという話をしていてできた曲で、悩んでる男の子に対しての具体的なアドバイスです(笑)。『タチアガレ』もそうですけど、とりあえずぶつかってみるという精神が必要だよねという応援ソング。

―『たったひとこと』は唯一のバラードで、声のキレイさが際立つなと思いました。

生のストリングスが入っていて、最後のサビからしかドラムが入ってこないっていう、自分の中で珍しいアレンジだったりします。この曲はメロディがすごく良かったのでずっと前から温めていて、それを今回、ここに入れました。このミニアルバム6曲を通して、あるバーで出会った20歳くらいの男の子に対して、私が酔っ払った勢いで説教しているっていう設定を"Theatre Kavka"から引き継いでいるんです。もし実際にそういうシチュエーションになったら、私だったら説教の途中で急に自分の身の上話もするんだろうなと思うところがあって。相手に対して親身になる時って、どうしたって自分の話もするじゃないですか。自分の腹の内を見せておかないと、向こうにも本音を言ってもらえない。だから、"ほら、行っといで!"って背中を押すような感じの曲の流れから、いきなり自分のストーリーが1曲入っていてもいいかなと思ったんです。恋愛で言うと、わりとキッパリと"はい、おしまい"ってできるタイプなんですけど、ちゃんと終われなかった恋は自分の中で嫌な感じで残ってしまっているものなんですよね。そんなモヤモヤとした気持ちを書いています。

―順番的にも5曲目というのが大事なんですね。はじめの4曲で発破をかけておいて、途中で自分のツラい経験を話して、腹の内を見せる、と。

1曲ずつでももちろん完結しているけど、6曲通して聴くと、私と一緒に飲みながら話をしているっていう雰囲気になったら面白いなって。

―ああ、だから最後の『FLY HIGH!』では、歌詞の内容が朝になってるんですね! 夜通し話し込んだっていう。

そうです(笑)。深い時間にこちらの身の上話もして、一緒に泣いて、いつの間にか朝が来て。『FLY HIGH!』は爽やかで、歌詞も前向きです。私だったらちょっと照れくさいから、暗い部分も入れたいと思っちゃうんですけど(笑)、潤平さんに作ってもらって良かったなと思いますね。潤平さんとは長い付き合いなので、私の中に全くない言葉は選んでいないですし。

―基本的なことをお伺いしますが、ドラムがヴォーカルをとるスタイルって珍しいですよね。

最初はドラムだけ、次は歌だけをやっていた時期もあって。でも酒の席で、現在のプロデューサーにドラムを叩きながら歌ってみなよって冗談のように言われたのが最初ですね。私もできるとは思っていなかったんですけど、とりあえず、それで1回ライヴをやろうと話になって、3カ月間で最初のライヴまで持っていって。まあ、出来は散々でしたけど(笑)。ドラムを叩いていると歌が入ってこないとか、最初はどっちかに集中するとどっちかが止まってしまうんですよね。なので全部分解して、こう叩く間に"あ"って言って、ここまでの動きで"う"を言わないといけないから、その間に"い"を言うみたいな。そういう分解の仕方をしながら、何度も反復で練習してちょっとずつ身体に入れて、1曲を習得するのに、最初は最低でも1~2週間はかかっていました。

―決して軽々とやっているわけではないのですね・・・。

ミュージシャンで努力していない人なんてひとりもいないですよ。私も時々、ハッとするんです、どうしてこんな大変なことやってんだろうなって(笑)。暴れながら叩くというのも私のスタイルですが、あれだけ暴れなければもう少し楽なのかと思ったり(笑)。

―ライヴでは暴れるのも気持ち良さそうです。よくライヴ中は真っ白になって記憶がないと言うミュージシャンもいますよね。

何も考えず、頭の中が真っ白になったまま叩けている時がやっぱり一番いいですよね。それはすべてがうまくハマってるっていう証だと思うので。でも、ふとした時にドラムを間違えると、そこに意識が向いてしまって、つられて歌も間違えるということがあります。ただ、ライヴ中に演奏は止められないので間奏の間に、ドラムを叩きながら精神を戻していくという作業をしています。

―毎回違うとは思いますが、ライヴ中、どのくらい真っ白になっていますか?

いいときは9割方ですかね。ライヴの最初に自分が今日はどういう緊張状態にいて、このステージがどう始まったかという調子を見て、今日はこうしなくちゃいけないとか段取りなんかもけっこう考えていたりします。いつでも何も考えずにできたらベストかなと思いますけど、私はわりとまだ考えてしまっていますね。特に良くない日は100%、ずっと考えてしまっていて。自分でも頭で考えながら叩いてるのはわかるので、そういう時の歌はお客さんに伝わっていないだろうなと思う。そうすると悪いサイクルに入っちゃって、"考えすぎてるな、考えすぎないようにしなくちゃ"って、もう考え過ぎちゃう(笑)。

―ソロアーティストでドラムでヴォーカルでってなると常にステージの中心にいて隠れる場がないですもんね。

バンドだとヴォーカルがちょっと後ろ向いたりとかありますけど、ソデに入るわけにもいかないし、MCもやらないといけないので、完全に逃げ場がない。だからこちらの状態もお客さんにはガンガンに伝わっているとは思いますが、そういうことも込みで楽しんでくれている方が来てくれているのかなとも思います(笑)。

―飲みの場で軽く言われたというドラム&ヴォーカルというスタイルで苦労も倍増なのかも?(笑)

後々、プロデューサーには"ごめんな、軽々しく言って"って謝られました。でも、楽しんでるので大丈夫ですよ~って(笑)。

―女優業のこともお聞きします。現在ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』に出演されていますが、ドSの刑事・増子すみれ役、ハマっていますね。

私はSとかサバサバしているとか、そういうふうに見えますけど、心の中は緊張で大変なんです、そう見えないツラしてるだけで(笑)。ある意味、その点は演技面では得しているのかなと思ったりはしますけど。

―現場の雰囲気はどんな感じですか?

増子の相棒・土井役の和田(聰宏)さんはすごくよくしゃべるんです。劇中では増子に振り回されていますが、和田さん自身の方が鋭利で、むしろS(笑)。私も"何それ、気持ち悪い!"とかバシッと言われますし(笑)、カメラが回っていないところではどっちかというと私がまあまあ、とか言っています。もともと2時間のスペシャルドラマを経てからの連続ドラマなので、スタッフ・キャスト含めて、皆さん、とても仲のいい現場で、ずっと和気あいあいとしています。主演の松坂(桃李)さんも濱田(岳)さんもとてもシャイなんですが、最初に和田さんとたくさんお話させていただいて関係性が出来上がったので、スペシャルドラマからの皆さんの中にも温かく迎えてもらっているとは思っています。

―女優として強烈なインパクトを残したのは『ファーストクラス』(2014)でしたが、やはり緊張されていたんですか?

緊張というか必死でしたね。"モノ作り"という面では音楽も芝居も同じですけど、作り方の過程や常識にしていることなど何もかも勝手が違う。わからないことしかなかったので、追いついていくのが大変でした。

―全然そうは見えなかったです。

なら、良かったです(笑)。

―『ファーストクラス』を経て得られたことは。

演技は現場でセッションを求められるんだなと思いました。私は自分のセリフを覚えて、相手の動きを想定して、それに対して私はこうするとか何となく決めて現場に行くんですが、相手は全く違う動きをするし、監督さんは急にセリフを足してくることも多く、それをその場でバーッと整理して本番で演技する。そういうふうに芝居を作り出していく緊張感はちょっとセッションに似ています。大切なところ―演技だったらセリフをちゃんと押さえて、後のところをいかに柔らかく準備していって、現場で臨機応変に対応していくか。その当時、セッションをあまりしていなかったというのもあって適応能力がすごく下がっていたんですが、そういう感覚を取り戻し、短時間で鍛えられた感じはありました。その後に、『K5(Kの累乗)』という、いろいろなミュージシャンの方とセッションしたアルバムを出したんですが、まずこちらがドラムの音を作っていって、(斉藤)和義さんや、YO-KINGさんが現場で出してくれたものに対して対応していくという作業をして。『ファーストクラス』の現場でもできたから、このアルバムでもできるなというような感じで繋げられたのは面白かったですね。音楽に返ってくるものを得られていい経験をさせていただきました。

―逆に、音楽をやっていたことで女優としてプラスだったことは?

監督さんからは、オンオフのスイッチの入れ方ができているということと、セリフを話す時のリズムや間合いが自然だったそうで、そこを指摘せずにすんだのは楽だったと言われました。長文のセリフでもリズムによって聞こえ方が変わってきますし、普段絶対に口にしないような難しい言葉を自然に聞かせるのがリズムだったり緩急だったりするので、そういうものは自然に持ちあわせていたようです。歌詞を書いていても、3音を使って、"あ・い・う"と歌ってもいいんですけど、"あ・い"にした方が伝わるよねという考え方をずっとしてきたからかもしれません。ゆっくりと緩急を使ってふわ~っと言った方がより怒っているように聞こえるよねということと同じで、台本を読んだときに、頭の中でそのリズムがパッと思い浮かびます。

―今後も女優のオファーはあるかと思いますが。

お話をいただけるのはもちろん嬉しいことなので、面白いことができたらいいなとは思っています。音楽だけにまみれる日々はそれはそれでいいですが、とは言え、何ごとも音楽とは違う面白さがありますし、人との出会いもありますし。何か興味深いこと・自分の音楽に返ってくるものがありそうだと思ったものがあれば、それに飛びついて楽しめる、そういう精神とかバイタリティは必要だなと常に思っています。もしかしたら演技に限らず、急にダンスに目覚めたりするかもしれないですし―絶対にできないですけど(笑)。



SHISHIDO KAVKA
シシド・カフカ 6月23日、メキシコ生まれ。2012年『愛する覚悟』でCDデビュー。ドラムヴォーカルという独特のスタイルで注目を浴びる。女優・モデルとしても活動しており、主な出演作は、ドラマ『ファーストクラス』(14)や映画『TOO YOUNG TOO DIE! 若くして死ぬ』(16)など。現在、ドラマ『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)に刑事・増子役で出演中。これまで『カフカナイズ』『トリドリ』の2枚のフルアルバムをリリース。
http://www.shishido-kavka.com/

『DO_S』
avex trax
発売中




本記事は「ローリングストーン」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事