京都大学(京大)は3月15日、歩き方の違いに影響される一歩ごとの股関節への負荷と、日常生活や仕事による一日の活動量を掛け合わせた「股関節累積負荷」という新しい指標を考案し、股関節累積負荷の増大は変形性股関節症の進行に関わる重要な要因であることを明らかにしたと発表した。

同成果は、京都大学大学院医学研究科 建内宏重助教、市橋則明教授らの研究グループによるもので、2月20日付けの国際変形性関節症学会誌「Osteoarthritis and Cartilage」に掲載された。

変形性股関節症は、股関節の痛みや可動範囲の制限、筋力低下などの症状が出る慢性進行性の疾患。これまで、骨形態の異常や加齢、性別など複数の要因が疾患進行に関わることが明らかになっており、また一般的に、股関節に過剰な負荷をかけることも疾患を進行させる可能性があると考えられてきた。しかし、関節へのどのような負荷が進行を加速させてしまうのかは明らかになっていなかった。

今回、同研究グループは、患者一人一人の歩き方の違いに影響される一歩ごとの股関節への負荷と、日常生活や仕事による一日の活動量(歩数)に着目。経過観察中の変形性股関節症の患者50名を対象に、一歩での股関節負荷に一日平均歩数をかけた「股関節累積負荷」を算出・分析した。この結果、一歩ごとの股関節への負荷と一日の活動量は、それぞれ単独では疾患進行に大きな影響はないものの、股関節累積負荷が増すことで変形性股関節症が進行することが明らかになった。

股関節累積負荷は、歩き方の改善や過剰な活動量の抑制により軽減できる可能性がある要因である。一般に、活動量を増やすことは生活習慣病の予防・改善において重要とされているが、同研究グループは今回の結果から、変形性股関節症の患者にとっては、過剰な活動量は疾患進行を加速させる危険因子であると指摘している。

日常生活や仕事による一日の活動量を掛け合わせた「股関節累積負荷」が変形性股関節症の進行に関わる (出所:京大Webサイト)