流行が作られるしくみ「同調現象」を、細胞の中で発見

情報・システム研究機構 国立遺伝学研究所の木村健二助教と木村暁教授らのグループは、九州大学大学院システム情報科学研究院の内田誠一教授らのグループと共同で、細胞内の流れ(細胞質流動)の生成と逆転のメカニズムを、遺伝学と数理モデルを用いた解析により明らかにしたと発表した。同研究成果は、英国科学雑誌 Nature Cell Biology に掲載された。

【左】人間社会における流行の生成と逆転。周りに同調しようとする働きにより全体がそろう(2段目)。しかし、気まぐれにより流行に飽きてしまう人が現れると、それにまた周りが同調し、まったく別の流行にそろう(4段目)。
【右】細胞質流動の生成と逆転。微小管がどちらに倒れるかで流動の方向が決まる。ある微小管が倒れると、小胞体の働きにより周りの微小管も同じ方向に同調する(2段目)。微小管は確率的に消滅し、新しい微小管がランダムな方向に伸長する。周りの微小管がその微小管に同調すると、違う方向への流動が生じる(4段目)。

人間社会の流行は気まぐれで、いつのまにか多数派と少数派の逆転が起こるが、流行の生成と逆転の原動力には、自らの意見や行動を周りの変化に合わせる「同調現象」が深く関わっている。この「同調現象」が、線虫の受精卵の流れ(細胞質流動)にも発見された。

細胞質流動は細胞の中の大規模な流れであり、植物の成長や動物胚の発生に重要な役割を担っている。流れは細胞骨格の繊維の向きに沿って生じ、多くの場合、流れる方向はその細胞種ごとの特性であらかじめ決まっているのだが、線虫の受精卵では細胞質流動の流れの向きが気まぐれに逆転するという。細胞内の流れは微小管が作るレールの上を物質が運ばれることによって生じるので、レールが一方向にそろうとより大きな流れが生じることになる。この流れは細胞の表層から無数に生える微小管が整列した方向と一致しているものの、どのようにして受精直後の細胞内で多数の微小管の向きが同調するかかがわかっておらず、この自己組織化のメカニズムの解明が課題だったということだ。

同研究では、動物細胞である線虫受精卵における細胞質流動中の小胞体の挙動を調べることにより、細胞内に網目状に広がる小胞体がキネシン依存的に運ばれており、微小管レールの方向性を同調させる「ネットワーク」の役割 を担っていることを発見。さらに、微小管レールを人為的に長くすると流れの向きの逆転がほとんど起こらなくなることから、逆転の頻度が微小管レールの長さで決まることを突き止めた。すなわち、小胞体の動きが流れの同調効果を生み、微小管の長さが細胞質流動の逆転の頻度に影響するということになる。また、この流動が細胞内顆粒の分泌を促進することで初期発生に貢献することも発見された。

細胞質流動は動物胚の発生や植物の成長に重要な役割を果たしており、同研究は、細胞質流動の生成と逆転 のメカニズムを明らかにしたことで、細胞質流動が関与する初期発生のしくみの解明につながると期待できるという。また、同調やその逆転を細胞内で操作できることを明らかにしたことから、人間社会と自然界の両方で見られる同調現象のしくみを明らかにする良いモデルケースとなることも期待されるということだ。



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