神木隆之介&藤原さくらー実写版映画『3月のライオン』に原作ファンの2人が挑む

神木隆之介&藤原さくらー実写版映画『3月のライオン』に原作ファンの2人が挑む

人気マンガ『3月のライオン』が実写化されると聞いてどんな作品になるのか、気を揉んだ原作ファンも多いだろう。だが、完成した前後編2部作を観れば、そんな思いは吹き飛ぶに違いない。映画の中で見事に主人公・桐山 零を演じきった神木隆之介と、この曲しかないと思えるほど作品に寄り添った後編主題歌を歌いあげた藤原さくら。原作ファンでもある2人が思いのたけを語った、本誌掲載インタヴューの完全版。彼らはこの映画にどう挑み、何を感じたの。

―お二人とも原作のファンだとおうかがいしましたが、最初にこの映画のお話が来た時はどう思われました?

神木:とても驚きました。もちろん、うれしかったです。僕は原作を読んだ時に、"こんなに人間味があるマンガはなかなかない"と思っていたんです。同じコマでも感じることが全然違ってくる、答えがない作品だなと思って。それを実写で表現するには、どうすれば良いか悩みました。

藤原:私も、お話を受けた時は衝撃的でした。まさかっていう感じでしたね。私は、原作も大好きなんですが、自分では将棋をしたことがないんです。でも、面白いんですよね。見ているだけで、将棋がやりたくなるんですよ。

神木:そうそう。僕も最初は将棋のマンガなんだろうなと思って読んでいたのですが、試合はわからなくても、どちらが優勢なのかは一発でわかるんです。それぞれの棋士がどんな想いでプロとして盤上に向き合っているのかが、伝わってくるんです。


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

―映画の中でも桐山 零という人物は独特な棋士ですが、神木さんはどのように捉えて役作りをしていったのですか?

神木:桐山 零は、おとなしそうに見えて、じつは全然おとなしくない人物だと僕は思っています。それこそ題名にある通り、静かなのですが、うちにライオンのような野心を秘めている人間だなと。なので、どうやってそれを表現するかを考えました。ふとした時に孤独を思い出す顔がある。だけど、盤上では負けん気が強いし、攻撃的なところもある。想いを出しすぎると違うキャラクターになりますし、出さなすぎても、ただの孤独を抱えた少年みたいになってしまうから。そこは、大友(啓史)監督ともよく話し合いました。マンガの実写化は人間が表現する以上、役者とか監督の理解が出てしまうと思うのですが、観る人によって見え方や感じ方が違うようにしたかったんです。なるべく僕らも答えを出さないようにしようと気をつけたので、その分、難しかったです。

―撮影の初めの頃に、何度も撮り直したシーンがあったと聞きましたが?

神木:歩いているシーンを何度も撮りました。撮影が始まってすぐ、監督と"とりあえずやってみよう"という感じで、20回ぐらい撮りました。後半は、自分でもどんな表情をしているのかわからなくなっていました。毎回、タイミングや表情を全部変えて、結局どのテイクを使われたのかもわからないです。

―そこで桐山 零を見つけられたって感じはあったんですか?

神木:なかったです(笑)。"これで桐山 零という人物をつかんだ"という感覚はつかめなかったかもしれないです。対局シーンは想像できました。姿勢とか座りかた、あとは対局室に入ってきた時に桐山だったらまずどうするだろうとか。日常のシーンは本当にいろいろな表情があって。それぞれの距離感で対応していけばいいのかと思い、演じました。川本家の人々に対しては"隣にいさせてくれるけど、絶対にこの輪の中には入れないだろうな"という距離感。棋士ひとりひとりに対してとか、香子に対してとか、相手との距離感をその都度、変えて演じました。それが人間なんだろうなと思って、自由に演じさせていただきました。


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

―藤原さんは映画を観てどう思われました?

藤原:ヴィジュアルから何から、全部神木さんはぴったりで、"桐山 零だ!"って思いました(笑)。ドラマの部分はもちろんなんですけど、将棋を指すシーンも素晴らしかったですね。静かなシーンでも迫力があるんです。将棋を指したことのない私でも対局シーンは食い入るように見てしまいました。それに、みんなマンガのキャラクターというより、本当にその人たち、ひとりひとりの人間を見ているような気持ちになるんです。原作のマンガが好きだと、実写の映画でイメージが違うなあと思うこともあると思うんですけど、『3月のライオン』はみなさん、はまり役で、全然違和感がありませんでした。

―対局シーンでは各棋士の個性が強く出ていましたが、演技は監督の指示があったんでしょうか?

神木:いえ、役者それぞれで考えています。僕も対局シーンを観ていて思ったのですが、みんな色が全然違うんです。本人も色が違うし、そんな人たちがぶつかる対局にも色があって、それも違う。幸田(豊川悦司)と宗谷(加瀬 亮)が向き合った時と、後藤(伊藤英明)と桐山が向き合った時の違いも観ていてわかるので、面白いなと思いました。

―コマの音もそれぞれ違いますよね。

神木:そうなんです。後藤さんは少し重いですし、島田さんは結構淡々とした音がする。宗谷さんはすごく静かで、僕のコマ音だけが安定していない・・・。迷いや気持ちの揺れが、手元とか音に出ているんです。そこは監督や音響の方がいろいろ考えてくださっていて、対局シーンは観ていて気持ちよかったです。


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

―話をちょっと変えて、後編主題歌『春の歌』について聞かせていただけますか?

藤原:この曲ってもともと、原作者の羽海野チカさんが『3月のライオン』を描く時にイメージされていた曲なんだそうです。それを歌わせていただくことになって、まず映画の後編を観たんですが、その時に号泣してしまって。

―どこら辺で泣いてしまいました?

藤原:いじめにあったひなた(清原果耶)ちゃんを桐山君が助けようとするところです。"間接的に自分が救われた気がした"って台詞がありますよね。あれは、本当にたまらなかったですね。

―そういう思いを参考にして歌をアレンジしていったんですね。

藤原:そうですね。後編はすごく温かい、家族との物語なんです。ずっと一人で歩いてきた零君が、自分にも仲間になってくれる人がたくさんいるんだって気づくお話。なので、祝福のような気持ちを曲に入れてほしいって監督からもお話があって。私は、もともとスピッツさんの原曲が大好きなんですけど、原曲はすごく疾走感、透明感があるんですよ。今回映画では、いい本を読んだ後みたいな感覚で観客のみなさんが気持ちよく帰っていただけるようなアレンジを目指しました。最初は一人で歌っているんですが、サビでは、みんながいるってことを伝えるために、コーラスをスタッフのみなさんに歌ってもらっているんです。私もひと言ひと言、気持ちを込めながら歌いました。一人じゃないんだよって。

神木:藤原さんは本当に素敵な声ですよね。それに、音楽がかかった瞬間って、速くもなく遅くもない、ちょうどいいテンポなんです。遠足に行く前みたいな感じ。しかも、この曲のリズムは後編の速さそのままなんです。観てくださる方も自然と入っていけて、"エンディングが来たぞ"というようにはならないのではないかと思うので、そのまま"ああ、温かい映画だったな"と素直に思っていただけると思います。

藤原:そう言ってもらえるとうれしいです。いろいろ試行錯誤の末、そのままのテンポでいくとか、監督とも話しあって決まったアレンジだったので。

―今回は前編と後編で主題歌が違うんですよね。ここら辺にも前後編ということに対するこだわりがあるんでしょうか?

神木:しかも同じアーティストではないですもんね。映画『るろうに剣心』シリーズは、曲調は違いますが、全部ONE OK ROCKですから。でも、そこがまたこの前後編のよさだと思うんです。前編のエンディングで、ぼくのりりっくのぼうよみさんの曲がかかると、"さあエンディングだぞ、これから何が始まるんだろう"という雰囲気になります。先程、色の話をしましたが、僕は前編と後編でも色が違うなと思っています。前編は何かを背負ったものたちが盤上で向かい合う姿を描いた戦いの映画。後編はまったく違う愛情の物語で、温かい味噌汁を飲んだような気持ちになれる映画。しかし連続して観ると、同じ作品でつながっている。その色の違いが主題歌にも表れていて、面白いと思いました。

藤原:ぼくのりりっくのぼうよみさんの曲は、"どうなるんだろう"ってわくわくさせられる感じですよね。あの前編を観たら、きっと後編が観たくなると思いますね。

―神木さんご自身は、今回の映画で特にこだわった点はあったのでしょうか?

神木:そうですね。これは意識の問題になってしまうのですが、僕は桐山の目の輝きにこだわりました。最初は何も見えないような目がいい。でも、終わりが近づくにつれて、どんどん希望を持ちはじめて、それで最後は、ちゃんと輝いていたいな、と思いました。一番最初と最後を見比べてみると、"やっぱり変わってる"と感じていただけるようにしないといけないと思っていて。これは前後編通して、自分では一番やりたかったことでした。


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

―完成した映画をご覧になられてその辺はうまくいっていましたか?

神木:前編の桐山 零の目の輝き方と、後編の一番最後の目の輝き方がきちんと違って見えたんです。"ちゃんと桐山 零として生きられた証だな"と、うれしくなりました。すごく納得がいっています。この映画は、前編と後編を通じて"自分が今いる場所"を、あらためて確認できる作品だと思うんです。自分の周りにいる人たちとか、ここにいられる状況とか、そういうことの大切さが実感できる映画だと思います。

藤原:私も前編と後編を観て感じたのは、神木さんと同じで『3月のライオン』は前後編でひとつの作品だってことなんですね。だから、どちらも観ていただきたい。あと、そういう作品の主題歌を歌えて、しかも最後を締めくくれたのは、本当にありがたいしうれしかったです。

―ところで、お二人で取材を受けられることってあまりないと思うんですが。

神木:初めてです。さっきまで、カラオケに行くかという話をしていて。

藤原:バチバチ行くんですよ、お互いに。それで盛り上がって。私は、アニソン、キャラソン、ボカロを歌うんですが・・・。

神木:とても意外だと思いました。藤原さくらさんの歌唱力でアニメソングを歌ったら、それはもうすでにひとつの作品になると思います。

藤原:(笑)アニソンは歌いますね。自分が歌っているジャンルとは対極というか、かけ離れた歌をカラオケでは歌うんです。でも、アニソンは難しいです。音階がくるくる変わるので。

神木:アニメソングは、全部元気が出るような曲だと思います。しかも、ここまで落ちてほしいとか、ここまで上がってほしいという、その通りに上がったり落ちたりする音階が多いのかなと思っています。

藤原:ああ、そういうことか。確かに音階はみんなが好きな感じですよね。アニソン、すごいです(笑)。


(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

―神木さんもアニソンを歌われるんですか?

神木:アニソンは女性ヴォーカルの曲が多く、僕は声が出ないのであまり歌わないです。歌うのは、スキマスイッチとか、RADWIMPSとか、BUMP OF CHICKENとか福山雅治さんとか、LArc-en-Cielとか、flumpoolとか、嵐とか、ORANGE RANGEとか、ケツメイシとか、桑田佳祐さんとか。・・・あと、星野源さんも。

藤原:実は以前、星野さんの武道館ライヴ行ったんです。神木さん、出てませんでした?私、次の日のPerfumeのかしゆかさんがゲストの時に観に行って、前日神木さんだったんだよって聞いて驚いたんです。"えっ、どういうふうに出ていたんだろう"って。こたつに入って、星野さんと歌ってたそうですね。

神木:ゲストとして出させていただきました。僕は鼻歌でしたが。

藤原:そっかあ。・・・と、さっきまで、映画じゃなくてずっとそういう話をしてたんです(笑)。


Photograph by Takeaki Hanaya

RYUNOSUKE KAMIKI
神木隆之介 1993年5月19日、埼玉県生まれ。2005年の『妖怪大戦争』で、第29回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後も『桐島、部活やめるってよ』(12)、『バクマン。』(15)など数々の話題作に出演し、若手演技派俳優として認められる。また声の出演でも高く評価され、主人公の声を務めた『君の名は。』(16)は大ヒットを記録。今年8月4日には、映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』も公開される。写真集+DVDブック『Sincérité(サンセリテ)』が発売中。

SAKURA FUJIWARA
藤原さくら 1995年12月30日、福岡県生まれ。2014年3月、高校卒業と上京を機に、オリジナルアルバム『full bloom』でインディーズデビュー。2015年3月、ミニアルバム『à la carte』でメジャーデビューを果たし、2016年2月には初のフルアルバム『good morning』もリリース。同年、テレビドラマ『ラヴソング』のヒロイン役で演技にも初挑戦。ファーストシングル『Soup』は、同ドラマの主題歌にもなった。


『3月のライオン』2部作
監督/大友啓史
出演/神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶ほか
前編・3月18日(土)、後編・4月22日(土)より全国ロードショー
http://www.3lion-movie.com/

神木隆之介&藤原さくら写真
Photograph by Takeaki Hanaya
Styling of Kamiki by Keita Izuka, Fujiwara by Seiko Irobe
Hair & Make-up of Kamiki by Inomata, Fujiwara by Sugo


本記事は「ローリングストーン」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事