小室哲哉連載|TK Future Lab Vol.3 テレビと音楽の未来

小室哲哉連載|TK Future Lab Vol.3 テレビと音楽の未来

ローリングストーン日本版とギズモード・ジャパンの共同連載企画【TK Future Lab】第三弾となる今回のテーマは、最近AbemaTVなどのインターネットTV番組や音楽配信がさかんになり、すっかり翳りを見せている"テレビと音楽"について。

昨年からAbemaTVで番組を持ち、さらに年末には民放TV番組に数多く出演していたTKに、テレビと音楽という文化の未来についてどう捉えているのか、小誌ライター ジョー横溝と、ギズモード・ジャパン ジェイコウガミ、TKとの鼎談形式で話を聞いた。

ジェイコウガミ(以下 ジェイ):小室さん最近、年末も含めてテレビによく出られていたなという印象があって。

TK:そうですね、オファーがあれば。音楽の話ができる番組は出てもいいなーと思っているので。音楽から脱線しちゃうとね、僕が出てもあんまり意味無いので(笑)。

ジェイ:去年からAbemaTVで番組もやられていて、ミュージシャンの方と対談などされていましたが、テレビの全盛期だった時代と、今のネット動画時代というところの違いや利便性についてクリエーターの方はどのように考えてらっしゃるのでしょうか?

TK:僕の経験からいくと、全てのガジェットでもデバイスでも何でもいいんだけど、新しいテクノロジーの実験にまず使われるのが音楽なんだよね。まず最初にやってみようかってなった時、音って意外と楽なので。データの容量だったりとかね。映像とか画像とかになると、やっぱりどうしても容量が増えちゃうから。ウォークマンからでも、カセットテープからでも、レコードからでもいいですけど、どの時代から切り取っても、結局まず音楽で実験してみて、それが上手くいくとじゃあ画像も平気なんじゃないか、動画も平気なんじゃないかってなる。最初サブスクっていったら音楽の話だったのに、今はサブスクTVというところまできてるからね。それは、単純に(音楽が)使いやすいというのもあるし、最初に新しいテクノロジーに対して意見を言ったり、いろんな抵抗をしたり、約束をしなきゃいけないのはミュージシャンだったりするんですよ。いわゆる権利の問題とか。"え!? そんなに持ってくの?"とか"これはコピーされたらどうなるの?"とか、そういうのはまずミュージシャンやアーティスト、アーティストに関わる人間達が全部法整備してからはじめたりする。時代の先端を行くって言い方をすればカッコイイけど、実は実験台にされてるんだと思う(笑)。だからあんまり"すてきなことです!"とは最近言わなくなった。まぁ、iTunesが来た時ぐらいはすてきなことというか、すげーよやっぱ音楽って先進だなーみたいなことを言ってたと思うんですけど。

ジェイ:最初にMTVが出た頃も、まずはミュージックビデオから入っていって、その後にどんどんカルチャーの要素が入っていきましたからね。

TK:そうだね。でも、今はその順番じゃない気がしますね。ちょっと順番が変わってきちゃった。

ジェイ:それは見る人のニーズがどんどん変化してるっていう?

TK:うん、ニーズが変化してる。(最先端の情報を)すでに持ってる状況から始まっているので。極論を言うと、もう何十年も僕同じ話をしてるんですけど、円を描く時、アナログのコンパスが一番きれいに円を描けるんですよ。今はデジタルで、スパコンとかで円周率を千桁くらいまで割り出して円を描ける時代だけど、実はコンパスの方が簡単に描ける。もうスマホじゃなくて、スマホの次の、まるでアナログのようなデジタルデバイスが出てこない限りは次の時代にはならないです。スパコンがちっちゃくなってくとかいろんな話を聞いても結局コンパスの方が楽じゃん、みたいな。

ジェイ:今テレビの音楽番組のフォーマットをネットでも同じようにやっていたり、一方でFNS歌謡祭みたいなああいう番組がちゃんとあったりとかってというところも、やっぱりまだまだアナログ的な要素が求められているということですかね。

TK:と、思いますよ。アナログの手法をそのまま応用して、デジタルに移行するというか今のソーシャルの時代に当てはめるというのは全然違和感はなくて、みんなが一番やっぱり入りやすいんだと思う。

ジェイ:年末に出演されていたマツコ・デラックスさんの番組、ああいうフォーマットすごくいいなと思ってるんですね。その理由は、あれをテレビで見てる人がネットで反応してくれて、そこにリアクションを返してくれたりとか、ブログを書いてくれたりとかっていう人達がいて、ああいうテレビの中での音楽の立ち位置だったりクリエーターのプレゼンテーションって、僕はまだまだ可能性があるなと思っているんです。完全にネットの中だけで完結しちゃっているネット番組もあるけど、それでは視聴者に届けるという意味で不十分な気がする。

TK:うん、それは文字だけで表現できないのと同じで、その時の喜怒哀楽の表情だったり喋り方というのは、確かにテレビでああいうオンタイムで見ながら同時にソーシャルも動いてる方が意味があるし、面白いかもしれないですね。ただ、じつは一番そこに必要なのは、そういうのを上手く聞き出せる人と、上手く話せる人なんですよ。その2人がいないとなかなか難しい。かといって全てのアーティストにそれが当てはまるかというと、というか全ての音楽番組に当てはまるかというと、そうでもない。話を聞き出せる人、それからそれを上手く解説できる人、これを両立できる人が必要で、そういう意味で言うと、マツコさんとかは非常に珍しいタイプの人かもしれないね。

ジェイ:小室さんご自身でAbemaTVをやられて、その辺はどういうふうにお考えですか。

TK:回を重ねるごとに意見を言うようになってきましたね。こうした方がいいんじゃないか、ああした方がいいんじゃないかっていうのは、オンタイムでソーシャルが動いているから一言言った瞬間に視聴者がそれに対しての答えだったり同意や意見、異論を言うわけで、それが少しでもいい方向に進んだ方がいいので。あのコーナーはあまり反応が無かった、みたいなことが如実に出てくるわけ。そうしたら、やっぱりあのコーナーはやめた方がいいんじゃないかっていう意見をついつい言いたくなってくる。レスが少ないとか、トレンドに入らないとか。結局のところ、ゲストの人がそこまで気を遣わなくても作り手の人が上手くトレンドに入るような構成にしていけばいいだけなんだけど。だから、今は非常に作り手側の手腕が問われる時代だと思いますよ。

ジェイ:これは今日すごく聞きたかったお話なんですけど、次の時代のテレビ文化ってどういうふうに進化していくと思われますか?

TK:ディスカバリーとかナショジオとかヒストリーとか、そこら辺の好きなものは録って観てみているんだけど、やっぱりああいう番組でも行き詰まり感はそろそろあって(笑)。もう一周しちゃったかなと。漫画と一緒で、ウィークリーだったりデイリーだったりすると、どうしてもマンネリ化しがちだし、そんなに毎週革新的なことなんて出せるわけないし。例えばワンクールならワンクール余裕を持って作らせてあげられるチームと、それからデイリーで今のソーシャルみたいな、その瞬間のトレンド、何にみんなが注目をしているかということにだけ特化したチームと、完全に二分化するのがいいと思います。

ジェイ:なるほど。そうなると業界自体が変わっていきそうですね。

TK:うん。あと、スポンサーも同じように3カ月で見ないで1年、2年っていう長い目で見るパターンと、1時間、2時間の感覚で見るパターンで分かれてもいいと思うんですよね。

ジェイ:サッカーの年間のスポンサーをやるのと、一試合の中継のスポンサーをやるのとっていう考え方みたいなことですね。

TK:非常にいい例えだと思います。もしかしたら前半、後半で分けてもいいかもしれない。うちは後半だけで、とか。

ジェイ:このチームは前半確実に点取るから、とか(笑)。

TK:必ずここは後半追いつくチームなんで、とかね(笑)。これはめちゃくちゃいい加減なマーケティングなんだけど、よく年末テレビ見ましたよとか、出てましたよねって言われるものって、全国ネットで10%超えてるんですよ。下手したら13、15、瞬間に17とか行ったりする。っていうことは、オンタイムで1千万人以上が見ているわけですよ。やっぱりそれは未だにネットでは追いつかなくて、僕がやってるAbemaTVとかでは、最高でも50万人、80万人。平均だと15万、20万人とかだったりするので。そういうところで地上波の威力というか、スポンサーがそれだけお金を投下する意義っていうのは未だに確実にあるなと思いますね。

ジョー横溝(以下 ジョー):それっていつか逆転すると思いますか?

TK:うーん、日本単体では逆転すると思わないです。例えばアメリカとかで逆転することがあったとしても、北米っていうエリアでだと思います。決してアメリカ合衆国だけの話ではなかったりするので。だから“エリア”。日本もアジアっていうエリアで考えたらあり得るかもしれない。

ジョー:あと、テレビが持ってる一つの役割って公共性ってことだと思うんですよ。ジャーナリストの方も言っていたんですが、アメリカでネットだけを見るようになった地域って、何が起きたかというと投票率が極端に下がったり同じ人がずーっと再選するような地域になってしまって、テレビも見ようよ、新聞も見た方がいいじゃない? と慌ててパブリックメディアを作り出したそうなんです。それまではオルタナティヴなものだけでいいよと言っていたのが、公共性が無くなっちゃうとバランス感覚がよくないからと。今の時代におけるテレビの役割って、瞬間的な数字は取れないけど世界規模で考えなきゃいけないことやこの地域に住んでるから考えなきゃいけないことのための公共性を養うことだと思うんです。だとしたら、じっくりドラマとかドキュメンタリーをやることで、その役割が欠如しちゃうと大変なことになっちゃうんじゃないかなと思うんですよね。

TK:僕もその通りだと思います。公共性の役割っていうのは地上波ならではだと思うし。でも、やっぱりお金も投下してほしいし時間もかけてほしい、頭も使ってほしいっていうのはあるんですよね。瞬間のニュースの伝達の手法、情報収集力だったりとか、そういうものって結局お金がないとできないわけで。最近、プライムタイムっていうの? わからないけど夜の時間帯でも、"視聴者提供"って出てくる映像が多いなと思って。それって要するにその場に行けていないってことじゃない? それっていいことなのかどうか。まぁ、瞬間の伝達としては確かにいい手段なのかもしれないけど、海外のCBSやABC、CNA、もしくはアルジャジーラもそうかもしれないけど、速攻で行って凄い絵を撮ってくるわけじゃないですか。あの力っていうのは、少なくとも日本のテレビ局ももっとやるべきだと思う(笑)。




2017年3月15日(水)
Tetsuya Komuro JOBS#1
<初回生産限定>2CD+DVD+ブックレット ¥6,800(税別)
<通常>2CD only ¥3,800(税別)
 
TETSUYA KOMURO
小室哲哉  1958年、東京都生まれ。音楽プロデューサー、作詞家、作曲家、編曲家。キーボーディスト、シンセサイザープログラマー、ミキシングエンジニア、DJ。83年にTM NETWORKを結成以降、自身の活動と平行して数々のアーティストをプロデュースし、多くのミリオンセラーを世に送り出してきた。2014年には、30周年を迎えたTM NETWORKのライヴツアーを決行。翌2015年にはglobeデビュー20周年として、セルフリプロダクトアルバム『Remode1』、2016年8月に続編『Remode 2』を発売。2017年3月15日には3年ぶりのソロアルバム『Tetsuya Komuro JOBS#1』をリリースする。
http://avex.jp/tk/


本記事は「ローリングストーン」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。

人気記事

一覧

イチオシ記事

新着記事