東日本大震災をもたらした東北地方太平洋沖地震によって東北地方・太平洋沿岸部の地盤は沈降したが地震後は隆起が続いていることが国土地理院の観測で明らかになった。巨大地震から6年を経ても地殻変動が続いていることを裏付けている。これまでのさまざまな研究機関の観測や研究から、大地震を起こした断層の周辺がその後もゆっくりと滑るようにずれ動いていることが影響しているとみられる。

国土地理院が8日に公開した人工衛星を活用した観測データ(GEONET)によると、東北地方の太平洋沿岸部の地盤は大きな地震に伴って水平方向東向きに大きくずれ、上下方向では沈降。例えば宮城県・牡鹿半島周辺では地震直後に東向きに5メートル以上ずれ、1メートル以上沈降した。しかし地震後は隆起傾向になり、地震5年後から最近までの約1年間で6センチも隆起した。地震前から最近までの沈降、隆起の累積としては約70センチ沈降になっているが、隆起に転じた後の隆起幅は30センチを超える計算になる。

国土地理院は GEONETとは別に測量に基づいて公共事業の高さの基準となる「水準点」の最新版(573地点)を2月28日に公表した。それによると、東北地方太平洋沖地震以降、東北地方から北関東にかけての太平洋沿岸部の広い範囲で地盤は隆起しており、水準点は2011年10月版と比べ、例えば震源に近い宮城県石巻市鮎川では約30センチ、気仙沼市長磯で約24センチ、仙台市青葉区で約15センチ、岩手県釜石市大町で約17センチそれぞれ上昇。上昇幅が「改定量」として記載された。

大震災で被災した太平洋沿岸部の多くの地域で防潮堤建設計画が進んでいるが、防潮堤の高さは水準点を基に設計される。このため、地表からの高さの設計を見直す必要に迫られる可能性がある。一方、地盤の高さが今後どう変化するかを正確に予測することは不可能で防災対策上悩ましい問題になっている。

図1 東北地方太平洋沖地震の約5年後から最近(約6年後)までの約1年間の上下方向の地殻変動。宮城県・牡鹿半島で最大値となる6センチの隆起が観測された(提供・国土地理院)

図2 東北地方太平洋沿岸部の主な地点の水準点の変化 (提供・国土地理院)

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