大ヒット中のアニメ映画『君の名は。』が、第40回日本アカデミー賞で脚本賞と音楽賞の2部門で最優秀賞を受賞。3日、東京・品川のグランドプリンスホテル新高輪で行われた授賞式の壇上では、新海誠監督とRADWIMPS・野田洋次郎がそれぞれ作品に対する思いを語った。

新海誠監督(左)と野田洋次郎 撮影:宮川朋久

東京と岐阜飛騨地方を舞台に描かれ、主人公・立花瀧の声を神木隆之介、ヒロイン・宮水三葉の声を上白石萌音、音楽をRADWIMPSが担当したファンタジック青春ラブストーリー。公開150日間で、累計動員は1,851万人、興行収入は240億円を突破。日本のみならず、アメリカ、フランスをはじめ世界各国で公開され、話題を呼んでいる。

第40回日本アカデミー賞では、4部門(アニメーション作品賞・監督賞・音楽賞・脚本賞)で優秀賞を受賞。最優秀音楽賞に選ばれてステージマイクの前に立った野田は、「ちょっと手が震えているんですけども」と予想していなかったようで、「本当に小さなところから始まった作品で、新海監督というすごい人が、全然すごくなく見えるすごい人が(笑)、どこまでも情熱を走らせて誰よりも諦めずにとにかく『まだこの世にないものを作るんだ』という情熱で動き出した映画でした」「新海さんと仕事ができて本当に幸せに思います」と素直な気持ちを口にする。

一方の新海監督も最優秀脚本賞のスピーチで、「最もいただけると思っていなかった賞でした」とうれしい誤算。野田の「全然すごくなく見えるすごい人」という言葉を「あれだけの言い合いをして、それでも親しげを込めて言っていただけたのがとてもうれしかったです」と喜び、「映画の根本は脚本であると信じておりますので、そこを見ていただけたということが本当に何よりもとてもうれしく思います」「これからも、たくさんの方に届く映画を作っていければ」と感謝と意気込みを語った。

また、同作は『オールナイトニッポン』のリスナーが選ぶ「話題賞」(作品部門)も受賞。野田は新海監督との密なやり取りの日々を「小さい秘密基地の中で『何やる?』『違うでしょ』と突っ込まれながら、突っ込みながら、何百往復もしながら作った」と回顧し、新海監督は「ちょっとでもいいものを作ろうと思ってたくさんのご迷惑をお掛けしてしまいました」と照れ笑いを浮かべて受賞の喜びを伝えていた。

■話題賞
・新海誠監督
リスナーの方々の投票ということで、本当に何よりもうれしく思います。ここにいる洋次郎さん・RADWIMPSと『君の名は。』を一緒に作っていたころは、「話題になる」なんて考えていませんでした。ちょっとでもいいものを作ろうと思ってたくさんのご迷惑をお掛けしてしまいましたし、いろいろなやりとりをRADWIMPSや他のスタッフたちとずっとやってきました。それがリスナーの方に選んでいただけたということで、ようやく報われたような気持ちになれました。

・RADWIMPS野田洋次郎
1年半という時間をかけて、画作りと同時進行で僕ら3人で音楽を作らせていただきました。どんな映画になるのかということもそうですけど、(監督と)2人で「あーでもない、こーでもない」と話していた時間がとにかく楽しくて、小さい秘密基地の中で「何やる?」「違うでしょ」と突っ込まれながら、突っ込みながら、何百往復もしながら作った映画。それをこういうふうに皆さんに観ていただけて、本当にうれしく思っています。ありがとうございます。

■最優秀音楽賞(RADWIMPS・野田洋次郎)
この度は本当にありがとうございます。ちょっと手が震えているんですけども。本当に何を話していいか。『君の名は。』は本当に小さなところから始まった作品で、新海監督というすごい人が、全然すごくなく見えるすごい人が(笑)、どこまでも情熱を走らせて誰よりも諦めずにとにかく「まだこの世にないものを作るんだ」という情熱で動き出した映画でした。1年半という期間を僕らもずっと歩ませていただいて、その間いろいろなことがあったんですけど、とにかく監督は僕らを信頼してくれました。「音楽が変わればセリフをカットします」「ここの尺を伸ばします」「この歌詞を聴かせたいから、このシーンを2分伸ばします」という、たぶん今までの映画の世界では行われなかったことを平気で監督はして、「絶対にこっちの方が伝わる」ということを、最後まで監督がやり切った成果だと思います。そんな新海さんと仕事ができて本当に幸せに思いますし、観ていただいた皆さんに心から感謝します。ありがとうございます。

■優秀監督賞(新海誠監督)
僕は30過ぎまでゲーム会社で働いておりまして、映画業界・アニメ業界にはおりませんでした。ですので、今でも映画を作る時にはスタッフに絵を描いてもらわないと、スタッフに演出を組み立ててもらわないと何もできないんですね。僕より大先輩の方々がスタッフにいてくれて、音楽のRADWIMPSもそうですし、神木くんたちもそうですし、僕よりずっと長くこの世界でがんばってきて方々の力をお借りして『君の名は。』という映画ができました。本当に作って下さった、支えてくれたスタッフのおかげです。ありがとうございました。

■最優秀脚本賞(新海誠監督)
最もいただけると思っていなかった賞でした。先ほど、洋次郎さんから「全くすごく見えない監督」と言っていただけてなんだかすごくうれしかった。あれだけの言い合いをして、それでも親しげを込めて言っていただけたのがとてもうれしかったです。『君の名は。』という作品はお客様に発見していただけた映画だったと思っています。でも、言われることで一番多かったのは「映像が美しい」「音楽がすごい」と言われることがとても多くて。脚本に言及していただくことが比較的少ない映画でした。ただ、やはり映画の根本は脚本であると信じておりますので、そこを見ていただけたということが本当に何よりもとてもうれしく思います。これからも、たくさんの方に届く映画を作っていければと思います。本当にどうもありがとうございました。