独立系半導体ナノテク研究機関であるベルギーimecとその姉妹機関である独立系IoTナノテク研究機関の蘭Holst Centreは、ロームと共同で2017年2月5日-9日に米サンフランシスコで開催された「International Solid-State Circuits Conference 2017(ISSCC 2017)」にて、低消費電力のIoT無線トランシーバ向け完全デジタルPLL回路(All Digital Phase Locked Loop:ADPLL)を発表した。

図1 中央のチップがimec/Hplst Centre/ロームが共同開発した低消費電力ADPLL(All digital Phase Locked Loop) (画像提供:imec)

PLLは一般的に無線トランシーバの中で最も電力を消費するブロックであり、消費電力全体の30%強を占めている。一方で、今回開発されたADPLL回路の消費電力は0.67mW、かつ40nm CMOSプロセスの採用による0.18mm2の小型化を実現した。さらに最先端のデジタルPLLの限界を上回る-56dBc以下のスプリアスレベル、2ps未満のジッタという高い性能を特徴としており、安定した信号生成を実現したとする。

図2 アナログおよびデジタルPLLの消費電力(mW)とスプリアス・レべル(dBc)。今回の研究成果は赤い星印。消費電力は0.67nW、スプリススレベルは

imec/Holstが推進する直観的IoT(intuitive IoT)は、無数の手の届かない場所に設置された微小なセンサノードに依存している。こうしたセンサノードは、バッテリの交換に手間がかかるため、バッテリ寿命の最大化を図るために消費電力を極限まで少なくする必要がある。今回のADPLLはこの目的のために開発されたもので、広く普及しているアナログPLLを置き換えられるものになるとimecらは説明している。

なお、今回の成果を受けてロームのLSI製品開発本部長である松本功氏は「我々はimecと一緒に世界トップクラスの低消費電力ADPPLを開発できたことを誇りに思う。今後は、これを用いて無線トランシーバを製作し、自社の保有する低消費電力センサやマイコンと組み合わせてセンサエッジ・モジュールへ集積する」と述べている。