国立がん研究センターの研究開発費に基づく研究班「わが国におけるがん登録の整備に関する研究」は2月16日、加盟施設での診断治療症例について部位別5年相対生存率、10年相対生存率を集計し、全がん協ホームページで一般公開した。

全がん協 部位別臨床病期別5年相対生存率の一部 ※(2006~2008年 診断症例) ※全国がん(成人病)センター協議会より

今回発表するデータは、全国がん(成人病)センター協議会(以下、「全がん協」)の協力を得て集計したもの。生存率には、実測生存率と相対生存率があるが、今回の発表は「相対生存率」(※1)となる。

収集症例は、1997年~2008年までに全がん協加盟施設で診断治療を行った453,035症例。集計対象は、5年相対生存率が2006年~2008年に診断治療を行い、一定の条件(※2)を満たした121,263症例。10年相対生存率は、2000年から2003年に診断治療を行った症例のうち、一定の条件(※2)を満たした45,359症例。

5年相対生存率を見ると、全部位全臨床病期の5年相対生存率は69.4%だった。1997年の62.0%から徐々に改善している傾向があるが、これは、化学療法、放射線治療や早期発見技術の進歩が貢献していると考えられるという。

部位別に見ると、90%以上と高かったのは「前立腺」(全症例: 100%、ステージ1~3: 100.0%、ステージ4: 64.1% )、「乳」(全症例: 93.6%、ステージ1: 100.0%、ステージ2: 95.7%、ステージ3: 82.6%、ステージ4: 34.9%)、「甲状腺」(全症例: 92.8%、ステージ1~2: 100.0%、ステージ3: 98.8%、ステージ4: 74.8%)だった。

一方、30%未満と低いのは、「胆のう胆道」(全症例: 28.3%、ステージ1: 60.3%、ステージ2: 27.4%、ステージ3: 16.2%、ステージ4: 2.7%)、「膵」(全症例: 9.2%、ステージ1: 41.2%、ステージ2: 18.3%、ステージ3: 6.1%、ステージ4: 1.4%)となっている。

10年相対生存率では、全部位全臨床病期の10年相対生存率は58.5%だった。部位別に見ると、「前立腺」(全症例: 94.5%、ステージ1~3: 100.0%、ステージ4: 40.5%)が最も高い。

次いで、「甲状腺」(全症例: 89.3%、ステージ1: 97.2%、ステージ2: 100.0%、ステージ3: 93.6%、ステージ4: 56.5%)、「子宮体」(全症例: 81.9%、ステージ1: 93.8%、ステージ2: 76.5%、ステージ3: 57.1%、ステージ4: 9.3%)、「乳」(全症例: 81.7%、ステージ1: 95.0%、ステージ2: 86.2%、ステージ3: 54.7%、ステージ4: 14.5%)、「子宮頸」(全症例: 71.4%、ステージ1: 89.1%、ステージ2: 65.2%、ステージ3: 50.4%、ステージ4: 16.4%)。

一方、30%未満と低いのは、「食道」(全症例: 29.4%、ステージ1: 62.8%、ステージ2: 36.2%、ステージ3: 18.2%、ステージ4: 5.0%)、「胆のう胆道」(全症例: 17.3%、ステージ1: 52.7%、ステージ2: 20.1%、ステージ3: 4.7%、ステージ4: 1.5%)、「肝」(全症例: 16.4、ステージ1: 32.0%、ステージ2: 17.7%、ステージ3: 8.2%、ステージ4: 2.1%)、「膵」(全症例: 5.1%、ステージ1: 28.6%、ステージ2: 9.1%、ステージ3: 3.5%、ステージ4: 0.3%)などであった。

同研究班では、がん種、病期、性別、年齢、初回治療などさまざまな組み合わせで5年相対生存率・10年相対生存率をみることができるデータベース「KapWeb」を公開している。

今回、「KapWeb」では新たに5年生存率算定のため、2008年に診断治療を行った32施設47,809症例の情報を追加した。さらに10年生存率算定のため、2003年に診断治療を行った18施設22,050症例の情報も追加している。

※1 すべての死亡を計算に含めた生存率を実測生存率というが、この中にはがん以外の死因による死亡も含まれる。がん以外の死因で死亡する可能性を補正するために、患者集団と同じ性、年齢構成の一般集団における生存率を、がんに罹患(りかん)していなかった場合の「期待生存率」として計算し、がん患者について計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢・分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったものを相対生存率という。

※2 5歳未満95歳以上は削除、良性腫瘍・上皮内がん・0期・転移性腫瘍は削除、解析対象は症例区分2~3(1: 診断のみ、2: 自施設診断自施設治療、3: 他施設診断自施設治療)、臨床病期判明率60%以上と追跡率(予後判明率)90%以上の全がん協生存率公表基準を満たした施設のデータのみを集計。