市場動向調査企業の台湾TrendForceは2月14日(台湾時間)、2016年第4四半期(10~12月期)の世界市場におけるDRAM売上高が前四半期比で18.2%増となり、DRAMメーカーに高収益をもたらしたと発表した。

PC向けDRAMの供給不足を招いたスマホ向けDRAMの好調

スマートフォン(スマホ)の出荷は、第4四半期がクリスマスシーズンを含む伝統的な繁忙期のためにピークを迎えた。中国のスマホブランドが好調を維持しているほか、AppleもiPhone 7ブランドで売り上げを伸ばしたという。

こうした動きを受けて、TrendForceの半導体メモリ調査部門DRAMeXchangeの調査ディレクターであるAvril Wu氏は、「モバイルDRAMの需要の高まりがPC DRAMの生産能力を圧迫し続けた。第4四半期のPC DRAMモジュールの大口契約価格は、市場の供給不足のため、平均で30%(第3四半期比)以上増加した。同期間にサーバDRAMは、PCおよびモバイルDRAMの価格上昇に遅れをとっていたが、2017年第1四半期には価格上昇する見込みである」と述べている。

DRAMサプライヤ各社は生産能力の拡大に向けた努力を進めているものの、その影響がでてくるのは2017年の後半以降となる見通しだ。そのため、DRAM供給不足はその間、継続的に悪化し、第1四半期のPC DRAMモジュールの契約価格は、前期比で約40%ほどの値上がりとなるほか、第2四半期もさらなる上昇が予想されている。

DRAM価格の上昇でトップ3社の営業利益は増加

2016年第4四半期の上位3社のDRAMサプライヤの売上ランキングには変化はなく、従前どおり1位がSamsung Electronics、2位がSK Hynix、3位がMicron Technology Groupのままとなった。Samsungは第4四半期に前四半期比12%増の59億ドルを達成した。また、SK Hynixも堅調に成長しており、前四半期比27.3%増の33億ドルとなり、世界シェアも約26.7%となった。3位のMicronは、同24.4%増の成長を記録し、世界シェアは19.4%となった。

DRAM価格が上昇したことにより、サプライヤ各社の第4四半期の営業利益率が上昇し、各社は高収益を確保した模様だ。Samsungの営業利益率は45%に上昇し、SK Hynixも前四半期の25%から36%に増加。Micronの営業利益率も前四半期の3.7%から14.9%へと大きく増加した。今後も継続的な価格上昇が予測されるので、TrendForceでは、サプライヤの営業利益は2017年第1四半期も増加するとみている。

表 2016年第4四半期(10-12月期)のDRAMメーカーの世界市場売上高ランキング(単位:100万ドル)。表の左側から、順位、企業名、2016年第4四半期売上高、 2016年第3四半期売上高、第4四半期の前四半期比成長率(%)、2016年第4四半期のシェア(%)、2016年第3四半期のシェア(%) (出所:TrendForce/DRAMeXchange)

18nmプロセスの量産導入が2017年の目標に

さらなる微細化に向けた技術開発に関しては、Samsungが他社に先行し18nmプロセスの導入を今年の目標として掲げている。18nmプロセスの導入については、まず韓国のFab17で実施し、成功すれば他のファブへも展開する計画で、目標としては2017年末までにDRAMの総出荷量のうち少なくとも40%を18nmプロセス品にすることであるという。

一方、SK HynixはDRAM製造の歩留まりの向上に注力し、生産高を高めようとしているほか、18nmプロセスについては、2017年後半に移行する予定で、これを機にSamsungに対する追い上げを図りたい模様だ。

Micron Groupについては、同社の子会社であるMicron Memory Taiwanが2017年1月より18nmプロセスの量産を開始している。Micron Memory Taiwanは2017年末までに生産能力のほとんどを18nmプロセスに移行する予定である。このプロセス移行が順調に進んだ場合、Micronは新たに買収した台湾Inoteraに2017年後半に18nm生産を採用させる可能性がある。

なお、4位以下の状況だが、4位の台湾Nanyaは、顧客からの強い需要と特殊なDRAM製品の価格上昇のために売上高が前四半期比で18.2%増加した。同社はコストのさらなる削減のために20nmプロセスへの移行を加速させており、2017年末までに、20nmプロセスで月産3万枚の生産能力を達成しようとしている。5位の台湾WinbondのDRAM売上高は、前四半期比4.6%減とマイナス成長となった。これは主に同社が製品のミックスを調整し、需要が多いNOR型フラッシュメモリの生産量を増加させたためである。Winbondは、2017年の後半に38nmプロセスの量産を開始する予定としている。6位の台湾Powerchipは、一度失った顧客を取り戻したほか、DRAM契約価格の上昇に支えられて、前四半期比59.2%増という驚異的な売上高の伸びを記録した。