富士経済は2月9日、「中国向け越境EC市場の実態と今後 2016」を発表。同調査は2016年7月~12月、同社及び中聯富士経済諮詢の専門調査員による参入企業などへのヒアリング、及び関連文献調査・社内データベースを元に行われた。

中国ECと中国向け越境ECの市場規模及び商品カテゴリー別、受注形態別、販売エリア別の市場動向や購入者属性などを分析するとともに、中国向け越境EC市場への参入企業のケーススタディを通して、市場の現状を把握し今後の方向性を予想している。 なお、調査対象の市場は物販。

「中国向け越境EC全体市場(物販)」

中国向け越境EC全体市場(物販)は、2015年は「天猫国際」「京東全球購」がモール内に国・地域別の専門館を開設したことにより、各国企業の出店が急増。全体の商品数が増加し、市場は大きく拡大した。2016年は4月の新税制の公布により、商品によっては増税となったことで、参入企業の越境EC事業への注力度が低下や利用者の需要減退を招き、伸び率はやや鈍化。市場は前年比23.7%増の2,320億元(3兆8,443億円)が見込まれ、2019年には4,700億元(7兆7,879億円)と予測される結果となった。

「日本からの中国向け越境EC市場(物販)」

日本からの中国向け越境EC市場(物販)については、急拡大を続けているという。中国市場への進出を図る手段として越境ECへ注目が集まり、2015~2016年にかけて日本企業による中国ECサイトへの旗艦店出店や卸での進出が増加。中国で日本の化粧品や雑貨、食品、家電などの認知度が高まっていることも、市場拡大の追い風となっており、結果、2016年は613億元(1兆158億円)が見込まれ、2019年には1,270億元(2兆1,044億円)に達する予測となった。需要の中心となっているのは、大都市が集中する華東、華北、華南。

商品カテゴリー別では、現状、ベビー用紙おむつとスキンケア化粧品に需要が集中しており、「生活雑貨」「ビューティ他」がそれぞれ30%以上の構成比を占めているという。

「生活雑貨」では、特に安心感や安全面から、紙おむつをはじめとした日本製のマタニティ・ベビー用品の人気が高い。また、スキンケア・化粧品や美容器具などの「ビューティ他」に関しては、2016年4月に行郵税が廃止されたことにより、100元以上の商品は実質減税となったため、単価の高いスキンケア商品の販売が増加。シャンプーやヘアケア商品の需要も高く、今後は高級スキンケアブランドの進出が期待されるとのこと。

受注形態別でみると、60%以上がスマートフォンを経由。4G対応の安価なスマートフォンが普及しており、大規模なセールイベント時にイベント中継をPCで鑑賞しながらモバイル端末で商品を購入する消費者が多いよう。また、ECサイト側ではショッピング用のスマートフォンアプリを公開し、クーポン発行などでスマートフォンへの顧客誘導を進めているという。