東芝は2月8日、次世代無線LAN(IEEE 802.11ax)向けに低消費電力ながら高い変換精度を実現したA/Dコンバータ(ADC)を開発したと発表した。同成果の詳細は、米国サンフランシスコで開催されている半導体回路国際会議「ISSCC 2017」にて2月8日(現地時間)に発表される予定だという。

IEEE 802.11axでは、前世代と比べ通信が混雑した環境でも4倍以上の高速通信が可能になるとされているが、そのためには従来以上に高い変換精度を実現したADCが必要となり、ADC内の増幅器にも高い倍率精度が求められることとなる。しかし、従来の変換方式では倍率精度を向上するためには、消費電力が大きいオペアンプが必要となるため、変換精度と電力効率がトレードオフになるという課題があった。

今回、同社は低消費電力でADCの倍率精度を向上させることが可能なデジタルアンプ技術を開発。大半の回路をデジタル化することで、消費電力の大きいオペアンプを不要とし、消費電力を抑えることも可能とした結果、求められる変換精度を従来技術比で3倍以上の電力効率で実現できるようになったとする。

また、CMOSプロセスで製造されるため、プロセスの微細化により性能向上を図ること、ならびに実装コストを低下させることも可能だという。

左が従来の増幅器の回路図、右が今回開発された増幅器の回路図

なお、同社では今後も、どう技術の実用化に向けた開発を継続し、センサネットワークやウェアラブル機器などの活用場面の拡大につなげたいとしている。

開発されたADCのチップ写真