理化学研究所(理研)と東京大学は2月8日、アルマ望遠鏡を用いて、地球から450光年離れた位置にあるおうし座のL1527分子雲を観測し、その中心にある「太陽型原始星」の周りで起こる円盤形成の様子を調べた結果を発表した。

同成果は、理化学研究所 坂井星・惑星形成研究室 坂井南美准主任研究員、東京大学大学院理学系研究科の大学院生 大屋瑶子氏、山本智教授らの国際共同研究グループによるもので、2月8日付けの英国科学誌「Monthly Notices of the Royal Astronomical Society」に掲載される。

恒星と惑星系は、主に水素分子からなる星間ガスと塵からなる分子雲が、自らの重力で収縮することにより誕生する。その際、生まれたばかりの原始星の周りを回転しながら原始星へ落下するガスが原始星からある半径に達すると、原始星の重力よりも回転による遠心力が大きくなるため、ガスの角運動量の一部が外部に放出されなければ、惑星系のもととなる「原始惑星系円盤」は形成されない。この角運動量を放出するメカニズムの問題は「惑星系円盤誕生における角運動量問題」と呼ばれ、惑星系円盤形成の研究における最大の謎とされている。

この問題に対してはこれまで、電磁流体力学計算によるコンピュータシミュレーションなどで理論的に研究されてきたが、磁場の強さやガスの温度・密度構造、電離度などは、さまざまな仮定に基づくものであったため、実際に星が誕生する現場を詳しく観測することが求められていた。

今回、同研究グループは、おうし座にあるL1527分子雲コアをアルマ望遠鏡を用いて、高空間分解能で観測した。L1527分子雲コアの中心には太陽型原始星がある。この原始星の周りで起こる円盤形成の様子を調べた結果、エンベロープガスに含まれる炭素鎖分子の一種「CCH分子」の分布により、円盤の端で原始星方向へ落下するエンベロープガスが滞留・衝突し、円盤と垂直方向に膨れ出していることが明らかになった。

この結果について同研究グループは、垂直方向へ流れ出したエンベロープガスが衝突による衝撃波で回転のエネルギーを消費するとともに、角運動量を放出する役割を担っているものと考察している。今後、同じような現象が他の円盤形成領域でも確認できれば、角運動量問題の全容解明へつながることが期待される。

観測によって明らかになった惑星系円盤形成の様子の模式図。中心に原始星(白)があり、その周りに原始惑星系円盤(断面で表面がオレンジ色、内部が紫色の部分)が形成されている。赤線のように、外側から落下してきた低温ガスが遠心力バリア手前で滞留・衝突し、生じた衝撃波によって円盤と垂直方向にガスが膨れ出し、高温になっている (画像提供:理化学研究所)