産業技術総合研究所(産総研)は2月6日、LED照明に対応した高輝度・長残光時間の蓄光材料を開発したと発表した。

同成果は、産総研 先進コーティング技術研究センター 土屋哲男副研究センター長、立山科学工業らの研究グループによるもので、4月5~7日に東京ビックサイトで行われる「第2回高機能セラミックス展」にて発表される予定。

蓄光材料は、停電時も発光し続けるため安全誘導標識など災害時の安全誘導部材として活用されているが、近年では省エネ化のため、室内照明は蛍光灯からLED照明への置き換えが進んでおり、紫外光を含まないLED照明では、残光輝度や残光時間が低下する問題が生じてきている。このため、残光の高輝度化・長時間化が望まれていた。

そこで同研究グループは今回、母材料のバンドギャップ、賦活材料の濃度、トラップ準位の濃度を、イオン半径の異なった異種金属のドーピングによって制御し、かつ新しい合成プロセスを考案することで、高い結晶性と賦活材料の最適な酸化状態を実現したことにより、高輝度、長残光な蓄光材料の開発に成功した。

同蓄光材料に、波長460nmのLEDの光をあてると、材料中の電子が励起されることで発光し、励起停止後も発光し続ける。励起停止後10分の輝度は、市販蓄光材料の約3倍となった。また、市販蓄光材料では、LEDによる励起停止後、2時間で10mcd/m2に減衰したが、今回開発した蓄光材料は4時間後まで10mcd/m2の輝度を維持したという。

今回開発された蓄光材料とその残光特性 (出所:産総研 Webサイト)

さらに、同研究グループは、蓄光材料と金属有機化合物からなるハイブリッド溶液を用いて、産総研オリジナルのコーティング技術「光MOD法」により、PETなどの樹脂基板上に蓄光材料をコーティングした高輝度蓄光シートを作製。従来は蓄光材料を樹脂バインダーで基板上に固定化していたため、耐熱性・耐候性に問題があったというが、同手法を用いることで、耐熱性・耐候性に優れ、蛍光特性も低下しないものとなった。

光MOD法で製膜した蓄光シート (出所:産総研 Webサイト)

今後、同研究グループは、今回開発した蓄光材料と蓄光シートをもとに、安全誘導標識、照明、住宅建材、交通・モバイル機器などへの適用を進めていきたい考えだ。