九州大学(九大)は1月31日、発酵パパイア粉末を高齢経管栄養補給者に30日間投与することで、末梢血単核細胞の腫瘍細胞溶解能(ナチュラルキラー細胞活性)が回復することを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院農学研究院の中山二郎 准教授と湯野温泉病院の藤田雄三 医師らの共同研究チームによるもの。詳細は米国のオンライン科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された。

今回の研究では、ナチュラルキラー細胞活性の回復は確認されたものの、インターフェロンやサイトカイン各種の値の変動は確認されなかったほか、便中の腸内細菌を調べたところ、発がんリスクを高めるとされる二次胆汁酸生産菌「クロストリジウム・シンデンス」が投与前に比べて減少し、菌血症を起こすことが知られる「エガセラ・レンタ」も減少していることが観察されたという。

また、発酵パパイア粉末の成分分析から、高分子ポリフェノール類は発見されず、その分解物である低分子のフェノール酸類が検出されたとのことで、これらのことから研究チームでは、消化管から吸収されにくい高分子のポリフェノールが発酵により低分子化されることで免疫系や腸内細菌への作用を発揮することが示唆されたと説明。これらの知見については、腸疾患やがんをはじめとするさまざまな疾患の予防および治療法の開発や、高齢者の感染症予防、腸内環境の改善といったQOL(生活の質)向上につながることが期待されるとコメントしている。

発酵パパイア粉末摂取による加齢経管栄養補給者の末梢血単核細胞腫瘍細胞溶解能の変化(左)と糞便中のClostridium scindens(中)およびEggerthella lentaの存在比の変化(右) (出所:九大Webサイト)