NTTデータとスペインの子会社であるeverisグループ(エヴェリス)は1月27日、同国の病院のヴィルヘン・デル・ロシオ大学病院と、集中治療室(ICU)向けに「スマートアラートソリューション」を開発したと発表した。

昨今、ICUの現場では高度な医療機器を用いて常時患者のバイタルをモニタリングし、合併症のリスクに備えているが、深刻な状態に陥ることを防ぐため、適切なタイミングで医療介入を図ることが可能な仕組みが求められている。

同病院においても、これまでの臨床経験から合併症が発症する2時間前までにリスクを知ることができれば、より詳細な診断を行ったうえで適切な処置が可能となり、患者の回復の短期化が図れると考えていたという。

これを受けて、NTTデータとエヴェリスは従来のモニタリングに加え、蓄積したバイタルの時系列データから患者が合併症を発症するリスクを予測し、医師に通知できるよう、ICU入院患者にとって致命的かつ頻度の高い合併症の「敗血症ショック」「急激な血圧低下のエピソード」「低酸素血症」の3症例を対象に、症するリスクをAI(人工知能)技術により、発症2時間前に予測するモデルを開発。

同モデルは、「MIMIC II」という公開ICUデータと、2015年10月から病院で蓄積した30億件以上の患者のバイタル・データおよび、検査結果や投薬などの患者に関するデータをベースに構築している。

同モデルをICUのオペレーションで利用するため、従来は各医療機器で収集し医療モニタや紙で確認していた情報を収集・統合することで、予測の実施から医師・看護師へのリスク通知まで、1つのシステムで一貫して運用可能としたスマートアラートソリューションを開発した。

同ソリューションは、NTTデータのOSSビッグデータ基盤上で患者のバイタル・データを分散ストリーム処理が可能な仕組みとなっており、合併症リスクの予測をリアルタイムに行う。同システムが合併症の発症を予測すると、即時にベッドサイド端末やモバイル端末に通知し、医師や看護師が確認できるという。

また、通知の際に症例の診断に必要なバイタル・データを同時に提供することで、医師がその場で迅速な診断が可能になるとしている。両社は1月30日から同病院において、同ソリューションを27ベッドに導入し、PoC(Proof of Concept)の実施している。

各ベッドの医療モニターや輸液ポンプなどの175デバイスに接続し、常時合併症リスクの予測と医師・看護師への通知をICUのオペレーションで運用し、診断支援を行う。導入後、3症例の合併症発症率をモニタリングし、導入前と比較することで同ソリューションの効果を検証する。

今後、国による生活習慣などの違いからくる患者の傾向に関わらず同ソリューションを利用できることを検証するため、同病院でのPoCに続き、スペイン以外の複数国での検証を計画しており、まずはチリの病院で2017年春から開始する。

両社はICUデータを蓄積・参照可能なICU版拡張電子カルテ・システムを「ehCOS(エコス) SmartICU」として2016年11月から商用化し、スペインを中心に展開している。2件のPoCを経て、同ソリューションをehCOS SmartICUの新機能に加え、2017年内をめどに商用化し、スペイン・南米・北米から世界各国の病院へと展開を進めていく。