メタボリックシンドローム(メタボ)の人は胆石ができやすくなる一連のメカニズムを解明したと東北大学の研究チームが発表した。胆石の発症に肝臓の酸素不足が大きく関与しているという。研究成果はこのほど米消化器病学会誌に掲載された。

図 脂肪肝に伴う胆石形成メカニズム。赤い矢印は増加、青い矢印は減少を示す(東北大学提供)

胆石は肝臓や胆嚢(たんのう)、胆管にできる結石。推定発症率は欧米では成人の10∼20%、日本を含む東アジアでは5~10%。肥満(内臓脂肪の蓄積)のほか、高血糖、高血圧、高中性脂肪、低HDLコレステロールについて一定の基準に該当するとメタボと診断される。メタボの人は肝臓に脂肪が蓄積する脂肪肝になって胆石症も発症しやすいと指摘されていたが、詳しいメカニズムは不明だった。

東北大学大学院医学系研究科の山田哲也(やまだ てつや)准教授らの研究グループは、脂肪肝になって肝臓内の一部の血流が減少すると、肝細胞が酸素不足になることに着目。メカニズムを詳しく解明するために遺伝子改変マウスを使って実験を続けた。

その結果、肝細胞が酸素不足になると肝臓の細胞が反応して「低酸素誘導因子HIF-1α」という分子が活性化し、胆汁に水分を供給するのに必要なタンパク質(アクアポリン8)は減少する。このため肝細胞から胆汁への水排出が減って胆汁が濃縮してしまい胆石ができるーという一連のメカニズムが明らかになった。「低酸素誘導因子HIF-1α」分子が働かないようにした遺伝子改変マウスは胆石の形成が抑えられたため、この分子が一連のメカニズムでもポイントになっていることがはっきりしたという。

また、胆石の患者では「低酸素誘導因子HIF-1α」分子が増加していることも確認できたため、研究グループは一連のメカニズムは人にも該当し、脂肪肝に伴う胆石の病態解明や治療に貢献できると期待している。

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