東武鉄道の新型特急車両500系「リバティ」が27日、報道関係者向けに公開された。貫通扉を備えながら先進的なデザインとなり、車内も沿線の自然や文化をイメージさせる空間に。最大の特徴である併結・分割機能を生かし、4月21日から営業運転を開始し、日光・鬼怒川・会津方面の特急列車や通勤時間帯の近距離特急列車で使用される。

東武鉄道の新型特急車両500系「リバティ」。前3両が501編成(501-3・501-2・501-1)、後ろ3両が503編成(503-3・503-2・503-1)

3両固定編成の「リバティ」は車体前面に貫通扉を設置し、途中駅で車両分割・併結を行い、異なる目的地へシームレスに利用できる仕様とした。1月27日の車両撮影会では501編成・503編成の2編成6両(併結時の1号車は501-3、6号車は503-1)を公開。現時点でこの2編成を含む3編成が搬入済みで、営業運転開始までには全8編成そろう予定だという。

車両デザインの監修は奥山清行氏率いる「KEN OKUYAMA DESIGN」。車体前面のデザインに関して、車両撮影会にて「併分割を行う車両は構造的に大きな制約があります。その中でも特急列車のスピード感を出すため、傾斜を持たせた形状を採用しています」と説明があった。前面窓の斜め形状や側面のグラフィック、シャープな造形を際立たせるLED前照灯など、オリジナリティを持ったインパクトのあるデザインとなっている。

車体前面の貫通扉と、先頭部に格納されたホロBOXは運転室からの操作により自動で動作する。撮影会では車両分割・併結の実演も行われ、貫通扉とホロBOXが連動して開閉する様子を確認できた。編成同士をつなぐ貫通ホロの取外し・取付けは手動で行う。「リバティ」独自の構造といえるホロBOXについて、「傾斜を持たせた前面形状となり、従来より併結部分が長くなったことに対する工夫として採用しました」とのことだった。

「リバティ」は併結・分割が可能な仕様に。先頭部にはホロBOXと貫通ホロが格納されている

傾斜のある前面形状とすることで、貫通扉を備えながら独特なデザインに。中間車のスラッシュと「Revaty」ロゴも外観における特徴となっている

「リバティ」の外観は「シャンパンベージュ」を基調色に、窓周りのブラックに加えて「フォレストグリーン」と東武グループロゴカラー「フューチャーブルー」を採用。中間車の側面部に「フォレストグリーン」「フューチャーブルー」のスラッシュをあしらい、シャープかつダイナミックなイメージを持たせた。

車内の座席はおもに横4列(2列+2列)の配置となり、中間車に1人掛けの車いす対応シートを設置。先頭車(1・3号車と併結時の4・6号車)の定員はそれぞれ56名、中間車の定員は49名で、1編成3両の定員は161名となる。シートピッチは1,000mmとされている。

シートの表皮には伝統色の江戸紫を用い、江戸小紋の「継小紋」をモチーフとした柄をあしらった。肘掛には江戸の伝統工芸「印伝」をモチーフとした柄も採用されている。肘掛の内部には飲み物などを置ける小テーブルも用意されてあった。パソコンを置ける大型テーブルもあり、各座席の肘掛内側に設置されたコンセントで電源を確保できる。訪日外国人向け無料公衆無線LANサービス「TOBU FREE Wi-Fi」にも対応する。

「リバティ」の車内。パソコンを置ける大型テーブルに加え、肘掛の内部に小テーブルも各座席に用意されている

窓間の柱部は木目柄となり、江戸小紋の縁起物「勝虫(トンボ)」をモチーフとしたユニークなデザインに

フルカラーLEDの大型車内表示器で多様な案内が可能に

インテリアデザインは白を基調としつつ、随所に木目柄も取り入れられた。天井の曲線は鬼怒川や隅田川の流れをイメージした造形となっている。窓間の柱部のデザインも印象的で、江戸小紋で縁起物とされる「勝虫(トンボ)」がモチーフだという。扉付近に設置された車内表示器は既存車両より大型化され、フルカラーLEDとなったことで多くの情報を見やすく表示することが可能に。室内照明もすべてLED照明となり、ドア付近の手すりも発光・点滅してドアの開閉を知らせる。

中間車のデッキ部分(日光寄り)には多機能トイレ・洋式トイレ・男性用トイレやAEDが設置され、バリアフリーにも対応した開放的な空間となった。各ドアの上部に防犯カメラも設置されている。「Revaty」ロゴや車両番号・製造者を記した銘板も取り付けられ、川崎重工製であることを示す銘板はライムグリーンのデザインとなっていた。

川崎重工の銘板は車内・車外ともにライムグリーン。同社モーターサイクル製品のイメージカラーとして知られる

パンタグラフはシングルアーム型で両先頭車に設置

「リバティ」では乗り心地の向上のため、東武鉄道初となる車体動揺防止制御装置(アクティブサスペンション)を搭載。駆動用主電動機には高効率なPMSM(永久磁石同期電動機)を採用し、省エネルギー化を実現した。VVVFインバータ制御装置はIGBT2レベル方式電圧型PWMインバータとし、4in1パワーユニットの適用により小型化・軽量化を実現したとのこと。SIV装置はハイブリッドSiCのIGBT3レベル方式を採用し、高効率化を図った。

新型特急車両500系「リバティ」は4月21日のダイヤ改正に合わせ、営業運転を開始する。この車両を使用した日光・鬼怒川・会津方面への特急列車として「リバティけごん」「リバティきぬ」「リバティ会津」が設定され、「リバティけごん」「リバティ会津」上下各4本と「リバティけごん」「リバティきぬ」上り1本については下今市駅で車両分割・併結を行う。特急「リバティけごん」「リバティりょうもう」も下り1本のみ設定され、東武動物公園駅で分割される。通勤時間帯に新設される特急列車のうち、「アーバンパークライナー」下り1本が浅草発大宮・野田市行となり、春日部駅で車両分割を行う。

東武スカイツリーライン・東武アーバンパークライン(野田線)の近距離区間から、相互直通運転を行う野岩鉄道・会津鉄道まで、広範囲にわたってフレキシブルに運転予定の「リバティ」。新型特急車両の導入で「新たな運行形態を構築し、いままで以上に特急列車の利便性・快適性の向上を図ってまいります」(東武鉄道)としている。