東京工業大学(東工大)とブリヂストンは1月26日、極限環境でも活動可能なタフなロボットを実現する要素の1つとなるゴムチューブを用いた油圧駆動式ハイパワー人工筋肉を開発したと発表した。

同成果は、同大 鈴森康一 教授ならびにブリヂストンの櫻井良 フェローらによるもの。同研究は、内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する「 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジ」の一環として行われたものである。

同プログラムでは、災害現場のような過酷な環境下でも壊れにくく、機動性に富み、大きな力を使って災害復旧などに活躍できる「タフロボット」の実現を目指し、キーコンポーネントの1つとなる「タフ油圧アクチュエータ」の研究開発などが進められている。多くのアクチュエータは、電気モータで駆動されるが、その場合、力/自重比が低い(重くて力が弱い)、外部からの衝撃や振動に弱い(壊れやすい)、状況に応じて大きな力を出すと同時に柔らかく動くことが難しい、といった課題があったという。

研究チームは、そうした課題の解決に向け、人間の筋肉に着目し、それを人工的に再現することを試みたという。その結果、ゴムチューブと高張力繊維から構成され、油圧で駆動する人工筋肉の開発に成功したとする。具体的には、ブリヂストンが新たに高い耐油性と変形耐久性を持つゴムならびに高強度化学繊維を開発したほか、ゴムとチューブをかしめる耐高圧端末締め付け技術と組み合わせることで、油圧式のマッキンベン型人工筋肉を実現することに成功したという。実際の性能としては、5MPaの圧力時で、最大発生力700kgf(最大収縮率33%)を実現したとするほか、ゴムと持つ柔軟性や衝撃吸収性といった特徴を組み合わせることで、衝撃が加わるコンクリートのインパクトドリルによる穴あけ作業なども行えることが確認されたという。

マッキンベン型人工筋肉の概要と、今回開発された油圧式人工筋肉の概要

なお、同プロジェクトは平成30年度まで行われる予定で、現在、人工筋肉のほか、制御バルブやポンプ、シリンダ、モーターなどの研究開発も進められている。人工筋肉開発の次のステップとしては、従来以上に高い性能を実現できる災害ロボットに向けたコンポーネントならびにシステムを作製し、最終的にはロボットとしてより高い性能を実現できることを示したいとしている。

タフ・ロボティクス・チャレンジで開発されている油圧コンポーネント研究の概要

また、そうして実際に活用された結果のフィードバックを受け、さらなる技術改良につなげたいとしている。具体的には、脚ロボットや建設ロボットへの適用が想定されているとのことで、これらについては、今後の評価会などで披露していければ、としていた。

東工大とブリヂストンが開発した油圧式人工筋肉。外経は15mmとのこと。右は人工筋肉の断面。内部に作動油を入れて利用する

人工筋肉を束ねて作られた6軸手首部。右の人物は開発の指揮を執った東工大の鈴森康一 教授

インパクトドライバーを使ったコンクリートブロックの破砕デモ。人工筋肉はインパクトドライバーを支える腕の役割。使用時はピンと伸びた状態だが、非使用時は垂れた状態となっている

握力計を用いたデモ。用いている人工筋肉は1本。使用した握力計は最大90kgまで計測可能なため、人工筋肉にかける圧が高まりすぎるとエラー表示となる