中国で絶大な影響力を誇るインフルエンサーであり、美容専門スタイリストの李 铭泽(Rollin Li)氏に、中国における化粧品市場の最新動向と攻略のポイントを聞きました!

李氏はファンビンビン(范冰冰)、リンシンル(林心如)、ヨウシン(姚晨)ら、トップクラスの女優やモデルのメイクアップを数多く担当したあと、テレビの美容専門番組で司会者として活躍しています。

自身の公式アカウントでWeibo160万、WeChat45万のフォロワーを持つスーパーインフルエンサー「網紅(ワンホン)」でもある李 铭泽(Rollin Li)氏

――本日は弊社にお越しいただき、ありがとうございます。まず、中国の女性と日本の女性で、美容に関する意識の変化に違いを感じていらっしゃいますか?

李氏:美容に関する興味は、中国の女性たちの間で急速に高まっています。その要因は経済の発展とSNSの浸透です。裕福になってきた彼女たちは、ソーシャルメディアで拡散された情報を得ることで、どんどん美意識を高めています。数年前とは比べものになりません。一方で、数年ぶりに訪れた日本の街中では、女性たちに大きな変化は感じませんでした。

――日本では、中国の女性はあまり化粧をしないと思っている人も多いように感じますが、李さんはどのようにお考えですか?

李氏:中国でも、一部の人たちは進んでおり、化粧について勉強し、実践しています。しかし、全体的には、多くの人々は美意識を持ち始めたばかりで、どうしたら綺麗になれるのか、模索している段階です。特に、2級都市※1の多くの女性たちは、自分にあった化粧の仕方がわからないように見えます。

※1中国では都市が5級まで格付けされており、1級都市は北京、上海、広州、重慶に代表される18都市。2級都市は経済特区都市、省都、蘇錫の二都市、その他副省級都市で、石家庄、長春、合肥、珠海など25都市を指す。

――まずは化粧をするかしないかが最初の課題だと思います。綺麗に化粧を仕上げるというのはその次の課題ではないでしょうか?

李氏:化粧のうち、「メイクアップ」は中国の女性にとってはまだまだですが、「スキンケア」はすでに多くの女性たちに浸透しています。そして、比較的若い女性たちは、メイクアップにも興味を持ち始めています。だからこそ、今メイクアップの番組は大変人気があります。とはいえ、日本と違って、メイクをすることは一般的ではありません。メイクをするかしないかは、年齢よりも職業によって大きく異なります。ライフスタイル(仕事、教育など)が大きく影響しているのです。確実に化粧への興味が高まる中、人口の多い中国は、大変魅力的な化粧品市場だと思います。

――今、中国の女性たちは、どのような情報を参考にしているのでしょうか?

李氏:美容専門番組はもちろんですが、多くの女性は、スターたちのファッションを参考にしています。美容に関するビデオやインターネット上の画像なども参考にしているようです。

――李さんは美容専門番組の司会をされていますが、中国の視聴者はどのようなことに興味をもっているとお考えですか?

李氏:今のところ、視聴者の興味は、スキンケアに関することが多くを占めています。具体的には、ニキビができたらどうすればいいのか?シミ、シワへの対処法は?などの質問が寄せられています。メイクアップに関する質問はまだまだ少なく、ファンデーションをつけた後の皮膚の乾燥はどうすればいいか?どの色が合うか?今流行っているものは?などです。司会者としては、美容ゲストや視聴者と話をするための豊富な美容知識が必要だと感じています。

――スキンケアとメイクアップの市場について、どう思われますか?

李氏:現在、多くの女性が興味を持っている市場のベースは、スキンケアです。しかし、今後は、経済の発展と共に、メイクアップにも興味を持つようになるでしょう。韓流ドラマの影響力も見逃せません。人気ドラマが放送されると、男女問わず多くの若者たちの間で話題になります。メイクアップの市場は今後まだまだ大きく伸びるでしょう。

李 铭泽(Rollin Li)氏とインタビュアーの趙 会娟(写真右)

――中国国内で成功している日本のブランドは、何がよかったのだと思われますか?

李氏:成功しているブランドやメーカーの大きな特徴の一つは、「徹底的に追求する精神」という日本人気質が活かされていることです。もう一つ大事なことは、中国市場に合わせるアレンジ力ではないでしょうか。日本での成功体験を中国で実践しても、まず無理だと思います。中国では急速に市場が発展しています。10年前の日本の比ではありません。また、中国では、地域によってライフスタイルや消費習慣などが大きく異なります。一つの手法を中国全土に当てはめるのは難しいでしょう。市場にアピールするには、その都市ごとに、嗜好や生活習慣を理解する必要があります。また、中国では地域によって季節や気候が異なりますので、美容番組の中では、風土に合わせた適切なアドバイスを提供するように心がけています。

――越境ECを検討している日本の企業の中には、中国現地の情報を把握しきれていないメーカーやブランドも多くあります。インターネットでどのようなアプローチをすれば、中国の消費者に届くのでしょうか?

李氏:まずは多面的なやり方です。多面的なやり方というのは、いろいろなアプローチ方法を試みるということです。今、中国のインターネット環境にはさまざまな媒体がありますが、それぞれ特徴や良さが異なります。例えば、代表的なSNSであるWeibo(微博)とWeChat(微信)では伝達方法が違うので、効果も違ってきます。画像でアプローチすることもできますし、短い動画なら拡散も可能です。ここで重要なのは、コンテンツ内容が面白いかどうかです。今は消費者たちの経験値が高く、ただの商品説明ではすぐに飽きてしまいます。面白い内容だからこそシェアしたい、最後まで観てみたい、と思わせることができるのです。特に、中国で未販売の商品は、日本からのライブ放送(インターネットを通じた生放送)がおすすめです。中国の消費者に日本で販売しているものをリアルタイムで伝達し、エンゲージメントを促進しつつ購買意欲を高めます。ただし、大切なのは、単発ではなく、継続的に行うということです。ライブ放送だけではなく、短い動画を二次利用し、拡散し続けることも大切です。

――まとめると、多面的、コンテンツ重視、リアルタイム、継続という4つのキーワードとなりますね。今後、日本の商品が中国でも広まることを願っています。本日はありがとうございました。

筆者(インタビュアー)プロフィール

Vivian(趙会娟)

アライドアーキテクツ株式会社 中国SNSコンサルタント
中国ハルビン工業大学、廣島大學(広島大学)工学部修士卒業。
Globis経営大学院International MBA 修了。

日本メーカーでアジア・中国市場マーケティング・セールスを約12年担当後、2015年から東南アジア向けインフルエンサー・マーケティングサービスを展開。
国内外に数千人規模のインフルエンサーネットワークを持ち、在日中国人のコミュニティも運営。日中間のトレンド動向を常に観察・分析し、インフルエンサーマーケティングに取り組んでいる。「中日口碑」(中日クチコミ)というWechat公式アカウントで中国向けに日本のビジネス情報を発信中。

本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。

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