料理・食領域に特化した写真アプリ「SnapDish」から、ビジュアルマーケティング攻略のヒントを探る!

今、SNSマーケティングで“ビジュアル”コンテンツが重要だと感じているマーケターの方は多いと思います。そこでSMMLabでは、累計1500万枚の料理写真が投稿されている写真アプリ「SnapDish」の運営会社ヴァズ株式会社の阿部さんに、ビジュアルコンテンツのトレンドやマーケティング活用のヒントを教えていただく連載を開始します。

料理や食だけに限らず、ビジュアルコンテンツを活用するための情報が満載ですので、ぜひお役立てください!

こんにちは!

「SnapDish 料理カメラ」という写真アプリを運営しているヴァズ株式会社の阿部といいます。

料理・食領域を軸に、写真アプリを活用したマーケティングについて連載を担当させていただくことになりました。

写真共有アプリではInstagramが最大手だと思いますが、人がライフスタイル雑誌とは別に料理雑誌を買うことがあるように、料理について記録したい、しゃべりたい、眺めたい、という特化したニーズがあり、現在ではSnapDishにも累計で1500万枚を超える料理の写真が投稿されています。

この連載では、「写真アプリ」の運営側という視点から、新しいトレンドの傾向や、マーケティング活用の事例、その注意点などをお話しできればと思います。

InstagramやSnapDishなど偏らずになるべく一般化して使える視点でお役に立てるようしたいなと思っていますのでどうぞよろしくお願いいたします。

SnapDishアプリ

「写真」アプリによって生まれた新しいトレンド

まずひとつ簡単なクイズから。以下の単語がなんのことか分かりますか?

わんぱくサンド
無限ピーマン、無限○○
萌え断、断面
ぎゅうぎゅう焼き
アボカドローズ

さて、いくつご存知でしたでしょうか?

これらはいずれも主に写真アプリを中心に2016年にトレンドのあったキーワードです。

文字でご説明すると以下のような感じかと思います。

わんぱくサンド
具をめいっぱいに詰めて、パンよりも具を何倍も厚くした、ボリュームたっぷりのサンドイッチ

無限ピーマン、無限○○
素材になる野菜を、ツナ、中華だしなどと一緒にレンジでチンしただけの簡単な常備菜

萌え断、断面
サンドイッチやケーキ、パンなどを自作した際に、カットした断面の美しさを愛でること

ぎゅうぎゅう焼き
耐熱容器に、大きめに切った野菜や肉をぎゅうぎゅうに並べ、オーブンやグリルで焼いた料理

アボカドローズ
アボカドやフルーツなどを、薄いくし切りにしてずらしながら並べ、薔薇状に造形したもの

本当はすべてビジュアルで見るとよりわかりやすいのですが、ここで紙幅をとるのは本意ではないので、いくつかピックアップしてビジュアルとセットでご説明します。

「わんぱくサンド」は写真アプリ発で去年もっともインパクトがあったかもしれません。トレンダーズさんが出した2016年のトレンドレポートでも取り上げられていました。

SnapDish上の投稿で見ると下記のような感じです。

もうひとつ見てみましょう。下記は、「断面」についてのSnapDishユーザーの投稿です。

これをちょっと詳しく見てみましょう。

料理そのものは「ゼブラ柄のパン」「クロワッサン」「ティラミス」などさまざまに異なっていますが、コメントを見ていただくと、カットした断面がきれいであることに「綺麗」と満足していたり、「ホッとし」たり「想像より美しく仕上がり歓喜」しています。

このように写真に記録して共有するという行為が、「断面」のビジュアルへの意識を高めていることがわかります。こうした断面を萌える行為や断面そのものを「断面萌え」「萌え断」などと呼ぶようです。

これについてはInstagram「萌え断」で16,000件、SnapDish「断面」で4,000件ほど投稿されています。(Instagramは「断面」だともっと多いと思いますが食品と区分けできなくなるので「萌え断」で調べました。)

よく見てみると、ひとつ前で挙げた「わんぱくサンド」の例も全て「断面」の写真になっており、このトレンドの底堅さがわかります。

もうひとつ見てみましょう。

下記は、「ぎゅうぎゅう焼き」でのSnapDish上の投稿です。

これも、詰める具材はひとによってバラバラで、また詰める土台(トーストだったり、耐熱容器だったり、ピザ生地だったり)さえもバラバラですが、「ぎゅうぎゅう」に詰め込んだビジュアルが共通しています。

これについては、SnapDishで1,200件、Instagramで12,000件ほど投稿があります。

冒頭に例示した2016年のトレンドは、実はすべてこれらと同じ特徴があります。

手順・材料などにそれほど重点がなく、「フォトジェニック」さに重点がおかれた流行であるということです。

ファッションや食、インテリアなど「非言語情報」が大きな役割を占める領域

こうしたトレンドの生まれ方は、特にファッションやインテリア、料理など非言語情報が持つ影響力が大きいジャンルで顕著になっています。

例えば食でいえば「バレンタイン」という催事がありますが、「食材」や「レシピ」という観点からだけ見ていると、自社の商品が「チョコレート」や「スイーツ」に関係していない場合は「関係ないや」と思ってしまいがちです。

しかし、写真アプリ上では毎年2月14日付近に、お弁当に入れるニンジンや卵焼きから、おにぎりの海苔、ピザ生地の形まで「ハートの形」の投稿が激増します。

下記は、SnapDish上のハート型の投稿の例ですが、カレーやオムライス、パンなどなんでもハートの形にして楽しんでいるのがわかると思います。

こうした「フォトジェニック」なトレンドを意識すれば、例えばこれまで「関係ない」と思っていた催事にアプローチする方法を思いついたり、より消費者発のトレンドに寄り添った企画を作ることができるのではないでしょうか?

「Instagram(やSnapDishなどの写真投稿!)が流行っている」という話は多かれ少なかれみなさんご存知かと思いますが、それを自社のマーケティングに生かそうとすると「アカウントを開設しなければいけないのかな?」「広告出稿しないといけないのかな?」「人気のユーザーに投稿してもらうのを頼むとお金もかかるし……」などなどと、なかなか手の付けどころがないと感じていらっしゃる方も多いと思います。

しかし、必ずしも「Instagram」や「SnapDish」に企業アカウントを持ったり投稿企画を運営したりせずとも、「フォトジェニック」を出発点にした流行があるということを知っておくだけでも、マーケティングには活用できるのではないかと思っています。

料理・食の領域でいえば、例えば「食材」や「レシピ」など旧来型の情報だけに注目していると、こうした新しいトレンドやチャンスを逃してしまう可能性もありますので、流行の領域にアンテナを鋭くしておくことだけはどんなマーケターにとっても必要だと思います。

※ちなみにフォトジェニックという観点から見た料理軸での月次流行予測は、レポートをまとめてありますので、気になる方はぜひお問い合わせください!

この連載での大きな狙い

写真アプリはその普及度合いにも関わらず、海外産のアプリが多く、なかなか運営側からの情報が多く出てきません。

そのためか、写真アプリ/ソーシャルメディアを使ったマーケティングというと、話題性を狙った投稿キャンペーンの話、またはアカウント運営やファン数など、外部からでもわかりやすい数値の話になりがちです。

しかし、写真アプリを運営している私たちからすると、アプリ内ではもっと様々な態度変容が発生しています。

下記は一例ですが、「液体塩こうじ」という商品について、態度変容が発生している具体的なシーンです。

単に投稿にとどまらず、「よく見かける塩麹」について「こういう使い方もあるんだ」という認知や興味の深化、「買ってみようかな」という購買意欲の発生や、「スーパーでゲット~」という実購買、「えきしお」という愛称化、友達に「探して探して」と呼びかける推奨まで、実に様々な態度変容が発生しているのがわかります。

この連載では、どうやったらこうした購買やファン化などマーケティング上のゴールに辿りつけるのか、そういった部分を中心に、他ではなかなか出てこない運営側ならではの内容をお伝えできればと思っています。

筆者プロフィール

阿部 樹 (Tatsuki Abe)
ヴァズ株式会社取締役。ウェブ系コンサルティング会社、事業会社を経て、190万ダウンロードを超える人気料理写真アプリ「SnapDish」を運営するヴァズ株式会社にジョイン。事業開発担当として食品・飲料メーカー様のクチコミ構築支援にあたっている。

レシピと料理のカメラアプリ SnapDish
https://snapdish.co/

本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。

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