九州大学(九大)は1月18日、生後9カ月、1歳、1歳半の赤ちゃんの視線を調べたところ、1歳半の赤ちゃんでは、2人の成人が映る映像において、片方だけが対象に視線を向け、他方がそのことに気づいていない場面を見せると、気づいていない人物にすばやく視線を向ける傾向が見られることを明らかにしたと発表した。

同成果は、同大大学院人間環境学研究院の橋彌和秀 准教授らによるもので、詳細は国際学術誌「Frontiers in Psychology」でオンライン公開された。

今回の研究は、各月齢ごとに24名の赤ちゃんと保護者の協力を得て実施。画面に2人の成人女性の動画を映し、赤ちゃんが画面のどの部分をどんな順番で見たかの測定を行ったという。動画の内容は2種類あり、1つは2人が互いに顔を見合わせてから、片方が前にあるおもちゃの内1つに視線を向けるというもの、もう1つは2人が互いに顔をそむけた後に片方がおもちゃに視線を向けるというもので、解析の結果、9カ月および1歳の赤ちゃんは2つの条件ともに動画の人物が視線を向けたおもちゃに視線を向けること(動画の人物の視線を追いかけている)が確認されたが、1歳半の反応としては、前者の動画ではほかの月齢の赤ちゃんと変わりはなかったものの、後者の動画では、おもちゃではなく、隣にいる成人に視線を向けることが確認されたという。

この結果について研究グループでは、後者の動画では、成人2人の注意が共有されておらず、片方はおもちゃを見る人物の注視に気づいていないかもしれないし、ほかのことに注意を向けているかもしれないため、1歳半の赤ちゃんであっても、このような違いを踏まえ、気づいていない他者に自発的な関心を寄せていることが確認されたと説明。1歳半の赤ちゃんであっても、これまでの先行研究で報告があったような、自他間のやりとりにおいて、相手の気づいていない+知らないものを自発的に指さすような教えたがりの傾向を持つばかりか、他者同士のやりとりにおける心的状態の共有に対する気遣いまで発揮する高い感受性を持つことが示されたとしている。

なお、研究グループでは、「大人がさまざまなことを教え、赤ちゃんがそれを学ぶ、というイメージはたしかに一面の真実ですが、赤ちゃんはそれだけにとどまる存在ではないことが、今回の研究を含む近年の研究から明らかになっています。赤ちゃん自身が情報を発信し、周りの様子に気をもんだりしていることを踏まえた上で子育てや教育の現場に臨むことには、大きな意義があると考えています」とコメント。今後、1歳半でこうした傾向が出現する背景にある発達の要因を特定する必要があるとするほか、対面場面での多様な状況を設け、赤ちゃんがいかに状況に応じて情報伝達をする(しない)のかを、実証的に検討したいとしている。

乳児が見た動画の写真サンプル (出所:九大 Webサイト)

もう1人の大人を見る傾向の結果 (出所:九大 Webサイト)