第156回芥川賞を受賞した作家の山下澄人氏が19日、東京・帝国ホテルで記者会見に臨み、受賞の心境を「ひとごとみたいな感じです。すごいなぁ芥川賞…」とつぶやいた。

第156回芥川賞を受賞した山下澄人氏

強面(こわもて)のため、記念撮影で笑顔のリクエストをたびたび受けるも、どうしても苦笑いになってしまう山下氏は、照れからか、会見では終始言葉少なで、「王道の青春小説」という講評を聞いても「へぇ」と一言。

その他のやり取りでも、心境の変化による作風の変化を聞かれて「ないです。っていうか、心境はないです」、受賞を聞いた場所は「六本木。カフェ的な」、最後に言い残したいことも「いや、ないです」など、独特のテンポとサバサバした受け答えで、報道陣を笑わせた。

それでも、4度目のノミネートにして手にした大きな賞に「痛快。僕が芥川賞作家ですよ? ウソやろっていう感じだし、友達はびっくりすると思います」と、静かな語り口ながら驚きと喜びをにじませた山下氏。六本木のカフェ的な店で受賞の連絡を待っていた時は、一緒にいた担当の編集者の方が緊張していたそうで、「落ちたらすいませんって言おうと思ってました」そうだ。

これで、芥川賞候補として連絡を待つという緊迫の時間から解放されることに「本当にホッとしました」と本音をのぞかせ、今回は落選となった他の候補作家たちに「お察ししますし、おつかれさまでしたという感じ」と、ねぎらいのメッセージを送った。

山下氏は、倉本聰氏が主宰する、脚本家・俳優の養成塾「富良野塾」の第二期生で、自身にとって倉本氏は「若いときに両親が死んだんで、父親みたいなもん」だそう。「こういう記者会見をどっかで見て、『ちゃんとしゃべれ』って怒られるんかな」と想像した。

また、今回の受賞作である『しんせかい』の題字は倉本氏に書いてもらったもので、「ありがとうございます、しかないですね」と、頭が上がらない様子だった。

直木賞の恩田陸氏(左)と山下澄人氏