東日本大震災で大きくずれたと指摘されている日本海溝付近の海底断層は最大幅約65メートルずれていたなどとする解析結果を、海洋研究開発機構を中心とする共同研究グループがまとめた。巨大津波の生成メカニズム研究に寄与すると期待される研究成果で、論文はこのほど英科学誌電子版に掲載された。

図 解析に用いられた「球核有限要素モデル」と呼ばれるモデル(提供・海洋研究開発機構)

2011年3月の大震災(東北地方太平洋沖地震)は、海底の大きなすべりがプレート境界断層の浅い部分で起きたために巨大津波を引き起こした。巨大津波の生成メカニズムを解明するためには、プレート境界断層の付近のすべりの実態を正確に調べる必要があるが、詳しいデータはこれまで得られていなかった。プレート境界断層は日本海溝付近に位置していた。

海洋研究開発機構の冨士原敏也(ふじわら としや)主任技術研究員ら同機構のほか、カナダのビクトリア大学、カナダ地質調査所が参加する共同研究グループは、大震災の前後に大きくずれたとされていた海底断層周辺で観測したさまざまなデータなどを基に総合的に解析した。

その結果、海底の大きなすべりは広い範囲に及び、断層のずれの規模(すべり量)は場所で異なっており海溝付近で約65メートルと最大で、平均約62メートルだったことなどが分かった。

海洋研究開発機構は大震災直後から深海調査研究船「かいれい」などを用いた海底地形調査を実施し、地震前後の海底地形観測データなどを蓄積してきた。大震災時に実際に起きた断層すべり量の分布が今回明らかになったことから、同機構の研究グループは、プレート境界断層の浅い部分の動きの特性の理解がより進むと期待している。

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