ロシア国営宇宙開発会社ロスコスモスは1月12日(日本時間)、昨年12月1日に起きた無人補給船「プログレスMS-04」の打ち上げ失敗事故の調査結果を発表した。決定的な原因の特定には至らなかったものの、ロケット、もしくはエンジンの製造時のミスによるものである可能性が高いと結論付けられている。

プログレスMS-04を搭載したソユーズUロケットの打ち上げ (C) Roskosmos

問題を起こしたと考えられているソユーズUロケットの第3段エンジン (C) RKK Energiya

プログレスMS-04は2016年12月1日(日本時間)に、「ソユーズU」ロケットに搭載され、カザフスタン共和国のバイコヌール宇宙基地から打ち上げられた。

計画では、ソユーズUは打ち上げから約9分後に地球を回る軌道に入り、プログレスMS-04を分離するはずだった。しかし打ち上げから約382秒後の、第3段エンジンの燃焼中にロケットからの信号が突如、途絶える問題が発生。その後、ロケットと補給船は墜落し、打ち上げが失敗したことが確認された。

今回の発表によると、打ち上げ失敗はロケットの第3段と補給船とが意図せず分離したことで起きたとし、その理由として、第3段エンジン「RD-0110」(11D55)の酸化剤ポンプが出火、破壊を起こしたことで、第3段の酸化剤タンクが破壊されたためとしている。

そして酸化剤ポンプが破壊した原因として、発表では2つの仮説が挙げられている。

ひとつ目は外部由来の異物(FOD, Foreign Object Debris)によるもので、つまりロケットの製造時に、タンクの中などに何らかのゴミが残り、そのまま打ち上げた結果、飛行中にそのゴミがポンプへ入り込んで問題を起こしたというもの。

2つ目は、エンジンを組み立てる際に、ポンプが誤った組み立て方をされた結果、ローターの回転バランスが崩れて振動が発生し、やがてポンプが破壊されたというものである。

発表はこの2つの仮説を挙げたところで終わっており、決定的な原因の特定には至らなかったようだが、いずれにしても製造時のミスが原因であると結論付けられている。

もっとも、FODと結論付けるには、その残骸などが見つかっている必要があり、逆に見つかっていればそれが大きな証拠にもなるが、それがない状況で原因のひとつに挙げられている点には疑問が残る。あくまで推測だが、ロケットの製造メーカーとエンジンの製造メーカーは別であり、決定的な証拠がないなかでどちらか一方の責任として結論付けることができず、またいずれにしても製造過程の見直しで再発防止が期待できることから、あえてどちらの責任かは断定せず、両社に配慮した結論としてまとめたとも考えられる。

また発表では、ロスコスモスでは次の「プログレスMS-05」の打ち上げに向けて改善策を取るとし、詳細を近いうちに明らかにするとしている。

プログレスMS-05は当初、今年2月上旬の打ち上げが予定されていたが、この事故の影響により、その後2月21日に延期となっている。今回の結果の発表により、さらなる遅れなど影響があるのかは不明となっている。また、設計の異なるソユーズ2ロケットなどへの影響の有無も、現時点では不明である。

問題を起こしたソユーズUロケットの第3段機体(右半分、左半分はプログレスMS-04が収められたフェアリング) (C) RKK Energiya

問題を起こしたと考えられているRD-0110エンジン (C) KBKhA

【参考】

・http://www.roscosmos.ru/23117/
・ROSCOSMOS. THE POSSIBLE CAUSE OF THE PROGRESS MS-04 CONTIGENCY
 http://en.roscosmos.ru/20665/
・Progress MS-04 fails to reach orbit
 http://www.russianspaceweb.com/progress-ms-04.html
・Engine-Related Failure likely cause of Soyuz U Mishap with Progress MS-04 - Spaceflight101
 http://spaceflight101.com/progress-ms-04-roscosmos-mishap-report/