新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)は1月12日、「IoXソリューション」の社外の顧客に向けた提供を開始すると発表した。

IoXはIoTにヒトのインターネットを意味する「IoH(Internet of Humans)」を加えたInternet of Xの略称で、同ソリューションは、Things(モノ・設備など)とHuman(ヒト)によって支えられた現場を対象に、IoTとIoHの仕組みを連携・協調させることで、現場の動きをデジタル化し、安全・安心かつスマートな現場業務を実現する仕組みを提供するものとなる。

また、同社は2016年4月より、社内に顧客の現場におけるIoT活用に関連した事業を推進する「IoXソリューション事業推進部」を設立、新日鉄住金グループをはじめとした製造業、流通業などの顧客とソリューションの開発と実証実験を進めてきており、同ソリューションにも、そうした知見が盛り込まれているという。

NSSOLのIoXソリューションの概要と同社が目指すもの

具体的には、「IoTとIoHが高度に連携することで、顧客が新たな価値を生み出していく手助けが可能となる。特に製造業では、プロセスの全般をデジタル化することで、データのバリューチェーンを構築することが可能となり、スマートファクトリー、スマートプロダクトの双方の領域で連携したビジネスを構築することができるようになる」(同社IoXソリューション事業推進部長の東條晃己氏)としており、すでにIoXソリューションに向けたデータ分析環境としてData Veraci@absonneやDataRobotなどを提供してきたほか、グループでの現場で得た知見などを活用することで、顧客の価値最大化を目指していくとする。

また、同ソリューションの最大のポイントはIoHを重視している点にあるとする。「数年前からウェアラブル機器を活用した作業支援ソリューションなどは各社から提供されていたが、ウェアラブル機器が塵や水といった現場の環境に耐えられるものではないといった課題があった。近年になり、ようやくそうした課題を解決できるウェアラブル機器などが登場し、それらを組み合わせることで、現場の人間を本当の意味で支援することが可能になった」とIoXソリューションの特徴を説明。実際に、事業レベルの取り組みとしては、現場の作業員にヘルメットに着用可能なスマートグラス、両肩に作業員の位置情報を把握するためのセンサ、腕にGPSやバイタルデータを取得するためのスマートウォッチ、ポケットに送信のためのスマートフォンといったスタイルで、作業員の動きや状況の把握および遠隔地からの熟練者などによる作業支援といった取り組みが進められているほか、ほぼビジネスで利用できるレベルとしての物流分野における荷物のピックアップ支援の開発が進んでおり、フォークリフトでの荷物の輸送支援も実証実験レベルの研究が進められているという。

作業員の安全見守り支援のデモ。作業員が地図上のどこに居て、どういった状態なのか、といったことをモニタリングすることが可能なほか、スマートグラスを介しての作業手順を遠隔地から指示したり、といったことも可能。ちなみにスマートグラスはエプソン製で、防水・防塵対応なほか、ホットスワップによるバッテリー交換にも対応するという。IoXソリューションでは、こうしたハードウェアも併せて同社から提供されることとなる

ピッキング支援のデモ。スマートグラスにてQRコードを認識。正しい場所を把握した場合、ディスプレイ上のQRコードが緑色に変わって、次の作業手順が示される

「作業の手順などを熟練度などに応じて提示し、それにしたがって作業を行い、どれだけの時間がかかったか、結果がどうであったかをデータ化することで、作業改善などもつなげることができるほか、作業者が危険な状況に陥っていないか、機器が故障する可能性があるか、といった予防保全的な仕組みも提供できる。また、ナビゲーションによるピッキング支援により、初心者でも容易に作業でき、熟練者でなくても、作業効率を高めることなどができるようになる」と同社では説明しており、そうした作業支援を実現するアプリケーションを構築するためのプラットフォームをオープンソースベースで自前で開発。高いデータの可用性と処理のスケーラビリティ、リアルタイム処理を可能としたことで、無数のセンサから送られてくるデータ処理などにも対応が可能で、必要があれば柔軟に拡張することも可能だとする。

IoXソリューションはヒトとモノの行動などをデータ化することで、そのデータを活用し、作業効率や生産効率の向上といった改善活動につなげることを目指すもので、IoHを意識したアプリケーションが複数用意されていることが特徴

なお、同社では提供開始後、2-3年で数10億円規模にまで事業を成長できればとしており、今後、IoH系のアプリの拡充を進めていくほか、設備の予防保全などにもつながるIoT側の実証実験も水面下で進めているとのことで、それらの知見を活用したアプリの提供も進めることで、応用できる業務分野を拡大していきたいとしている。