2017年の半導体産業は、2016年後半から値上がりを続けている半導体メモリ、とりわけ、3次元(3D)NANDフラッシュメモリが、プラス成長をけん引する主役になることが期待されているが、台湾の市場動向調査企業TrendForceの半導体メモリ調査部門であるDRAMeXchangeは、「2017年のNANDフラッシュのグローバルな規模でのウェハ生産能力は前年比6%しか伸びないので、年間を通してNANDフラッシュ製品の価格は上昇し続け、結果として、NANDフラッシュメーカは好業績を記録する」との見通しを昨年末に発表した。

NAND業界全体で、従来のプレーナー(2D)NAND構造から3D NAND構造へ移行を急いでいるので、2D NANDの供給量が著しく減ってしまい、供給不足の事態をもたらすだろうとの見立てながら、多くのサプライヤが3D NAND量産の歩留まり向上に手間取っている。TrendForceの最近の調査分析では、48層3D NANDでは、先行する韓国Samsung Electronicsを除いて、必ずしも期待通りには製造歩留まりを上げられていないため、Samsungがじわじわとシェアを伸ばしているとしている

このため、現在試作に苦戦中の64層3D NANDが業界全体でストレージサプライヤにOEM供給できるようになるまで、3D NANDメモリの供給はひっ迫したままになる可能性が高く、その間、NAND価格は上昇し続け、サプライヤの売上高や利益を押し上げることになるとの見通しである。

2D NANDは第3四半期までにビット出荷量が5割を切る

DRAMeXchangeの調査ディレクターであるSean Yang氏は、「ほとんどのNANDフラッシュサプライヤは、2016年に次世代アーキテクチャへの移行に着手し、2016年の第2四半期以降、それぞれの3D NAND開発プロセスをスピードアップしてきており、2016年末までに、3D NANDはフラッシュビットの総出荷量の約30%に達した模様である」と語るが、一方で「NANDフラッシュ業界のウェハ生産能力は2017年に前年比6%しか増加しないだろう。多くのサプライヤが2D NAND製品の出荷を抑制し、既存の製造能力を3D NAND製造へふりむけている。そのため、2017年第1四半期に2D NANDフラッシュの市場供給が急激に減少すると予測されるほか、2017年第3四半期までに、業界全体のビット出荷量における2D NANDのシェアは50%未満にまで減少することが予測される」とビット出荷量における2D NANDの比率が急速に減少していくとの見通しも述べている。

64層3D NANDの出荷は2017年後半にも開始か!?

現在、多くのNANDサプライヤが64層3D NANDの歩留まりをなんとか向上させ、一刻も早くeMMC、UFS、クライアントおよびエンタープライズ向けSSDなどのさまざまなOEM製品に適用しようと研究開発を進めている。そのためDRAMeXchangeでは、64層の3D NANDフラッシュは、早ければ2017年第3四半期に大量生産と出荷の準備が整うと予想しているが、その一方で、3D NANDメモリの市場供給はかなり制限される見込みであるともしている。

需要増のSSDがNAND消費量の4割を占める

スマートフォンの出荷台数の伸びが鈍化し、タブレットの出荷台数も減少し続ける中、機器1台あたりのメモリ容量の増加傾向がモバイル向けNANDフラッシュの主な需要増加の要因となっている。例えばAppleのiPhoneは、128GBのストレージオプションがもっとも売れているとのことで、ライバルのスマートフォン各社も競争力を維持するために大容量のeMMCとUFSをすばやく搭載しはじめた。

このためNAND市場は今後もSSDブームの恩恵を受け続けることが見込まれる。DRAMeXchangeの最新の調査分析によると、2017年第4四半期中に世界中に出荷されるノートブックPCの5割以上がSSDを搭載するようになるとしているほか、エンタープライズグレードのSSD市場では、データセンターとサーバ向けが堅調に成長しているため、需要は引き続き増加するとしており、結果として、2017年のSSD市場は前年比で60%増加するとの予測が立てられている。さらに、SSDの需要は、2017年に世界のNANDフラッシュ消費の40%を占めるとも予測されている。

韓国勢が大増産の準備を整える一方、東芝は?

Samsungが1兆6000億円もの巨費を投じて韓国ソウル近郊の京畿道平澤(ピョンテク)市内に建設を進めている巨大NANDフラッシュ工場(第1期分)だが、計画が早められて2017年前半に3D NANDの生産を開始する見込みだという。すでに多数のエンジニアが同市に派遣され、工場の立ち上げの準備を始めたことが2016年末に明らかにされた。

また、Samsungのライバルである韓国SK Hynixも、忠清北道清州(チョンジュ)の既存NANDフラッシュ量産ファブ群の隣接地に2000億円超(建屋・クリーンルーム費用)を投じて新たなNANDフラッシュの量産ファブを建設すると、2016年末に発表した。2017年8月に着工し2018年6月に竣工する予定で、その後、状況を見て設備投資の時期を決めるとしている。

一方、国内最大メーカーである東芝は、米国における原発事業で数千億円にも及ぶ減損損失が発生する可能性があると2016年末に発表するなど、企業業績が急激に悪化する見通しである。同社の綱川社長は、稼ぎ頭の半導体のNANDフラッシュ事業を分社化し、上場して資金調達することも「必要なら検討する」と述べている。今後、資金調達が困難になる東芝が計画通り四日市のNAND製造棟に設備投資を続けられるのか、そして同社の半導体ビジネスがどうなるかが注目される。