SNSやスマートフォンが普及し、誰もが世界中に発信できる時代。その反面、新たな問題も生じ、2011年ごろからインターネット上の「炎上」件数は増加の一途をたどっている。今回は、2016年に起きた炎上を振り返るとともに、企業が気を付けるべき対策などを、炎上リスクの対策コンサルティングを提供するエルテスのソーシャルリスクエバンジェリスト 宮宗唯氏に伺った。

受け取り方次第で炎上する「女性蔑視」

家事代行会社役員のブログや、ふるさと納税のPR動画などが、「女性蔑視である」「性差別だ」「セクハラを想起させる」と批判されて炎上するケースが多発した。もちろん、発言者に悪意が無い場合がほとんどであり、他者との差別化により、より目立つために、際どい話題を探っていった結果だった。では、炎上を防ぐ判断基準はどこにあるのだろうか?

宮宗氏によれば、すでに炎上している話題を把握し、意識的に避けることが重要だという。例えば、「女性蔑視」が話題になっている時期には、それを連想させるコンテンツをできる限り省き、不要なリスクを回避すること。また、社内確認だけに留めず、社外コンサルタントや俯瞰的に見てくれるユーザーに意見を求めることも有効だ。

同氏はまた、2017年においても、このような広告における表現方法が炎上するケースの増加を見込んでいる。一度炎上すると、広告が取りやめになり、予算と時間をかけて制作したものがそのまま損失となるなど、企業に与える影響も大きい。同じコンテンツでも、時期や発信者の立場によって炎上の有無が変わってくるもの。発表タイミングと炎上トレンドを読むチカラが必要だ。

社員・従業員のコンプライアンス

アルバイトや店舗勤務の社員が、「芸能人の○○が店にきた」「芸能人の○○にこういうサービスを提供した」などと、軽い気持ちでSNSに投稿した内容が拡散し、勤務している企業が批判されるケースも多くあった。

投稿者は、嬉しさも相まって、ちょっとした自慢感覚で投稿したわけだが、「顧客情報の漏えいではないか」「教育が行き届いていない」「セキュリティ体制がちゃんとできていない」など企業批判に発展し、経営に響くケースも少なくない。

この場合、企業はどのように従業員教育を実施すれば良いのだろうか。これに対し、宮宗氏は、投稿者の危機意識に働きかけることが重要だと話す。多くの場合、炎上の危険性を「自分事」として捉えられていないことが要因だ。実際に炎上したら、投稿者の個人情報がネット上に晒され、その後の生活にも大きな支障が生じる。このような内容を定期的に啓蒙することで、従業員の意識を高く保つことができる。

また、花見の場所取りで市のルールを無視して場所を独占したなど、一部の社員の非常識な言動が、告発のような形でSNS上に拡散され、会社に対して批判が殺到する例もあった。

もちろん、一般常識・ルールから逸脱した行動が炎上の原因だが、企業は「不義は絶対に隠せない」ということを念頭に置いて欲しい。誰もがSNSで投稿できる時代のリスクを考えるべきである。

「おでんツンツン男」に対処する

では、年末話題になった「おでんツンツン男」や、大学生が営業中のスーパーで大声で踊って騒ぐ様子をSNS上に投稿して炎上するなど、来店客による不適切行動で炎上するケースの対処法についてはどうすればよいだろうか。

これらの事案を事前に防ぐのは難しいだろう。対処は起きてからとなるわけだが、重要なことは、顧客側の気持ちに寄り添うこと。つまり、問い合わせ対応を迅速に行い、顧客の心配点が払拭されれば、必要以上の炎上はないという。 悪質な来店客がきっかけで、衛生管理や管理責任を問われないように、万が一の出来事にも、迅速な対応が行えるように準備しておくことが必要だ。

ネット炎上のトレンドを捉える

炎上を防ぐには、炎上のトレンドに関係するキーワードを把握し、意識的に回避することはもちろんだが、事前に対策を行ったところで、炎上の可能性は発信するまで分からない。発信後もネット上の動向を注意深く観察し、危険だと思ったら、即時に対策する姿勢が重要だ。

一度炎上すると、個人であれば氏名・住所・勤務先などの個人情報がインターネット上で晒されて私生活が崩壊したり、企業であれば株価や時価総額にまで悪影響を与えるなど大きなダメージを受けてしまう。企業は、炎上に巻き込まれないように充分な対策をしてほしい。

取材協力

デジタルリスク総研による「2016年の炎上キーワードTOP3と2017年の炎上トレンド予測」