日本マイクロソフトとエム・データ、大阪大学の3者は12月12日、日本マイクロソフトの女子高生AI(人工知能)「りんな」と、エム・データがテレビ放送(番組およびCM)の放送実績を独自にテキスト化したデータベース「TVメタデータ」を活用することで、人工知能がどのように人間と感情を共有できるかを実証する産学連携の共同研究を、同21日から実施すると発表した。

3者は、人工知能と人間のコミュニケーションにおいて、相手の感情を読み取り感情を共有・共感することは、将来的に人工知能が人間に寄り添い協働していくために必須の技術であると考え、連携して共同研究を行うことにした。

3者では、人工知能と人間が共通の話題にしやすい代表的なコンテンツがテレビ番組やCMの情報であると考え、日本マイクロソフトがりんなにエム・データのTVメタデータを活用した新機能を実装し、りんなの480万人以上のユーザーに提供、その反応を3者で連携して分析することで、人工知能と人間の「共感」を検証する。

今回の取り組みでは「女子高生AI りんなに、エム・データのテレビ番組や番組内で紹介された商品などのデータを取り込み、ユーザーとのやりとりで活用」「りんなとユーザーのやりとりや、ユーザーの感情を分析、りんなの会話能力に随時反映」を行う。

女子高生AI りんなに、エム・データのテレビ番組や番組内で紹介された商品などのデータを取り込み、ユーザーとのやりとりで活用では、日本マイクロソフトは12月21日からLINE上のユーザーが、りんなとテレビ番組やCMに関する雑談を楽しむことができる新しい機能を提供開始する。

りんなは、過去に放送されたテレビ番組やCM、出演した俳優・芸能人・タレントの情報をTVメタデータで横断的に取り込むことにより、芸能人がテレビで紹介したおすすめスポット情報を提供する「芸能人聖地巡礼」などの新能力をユーザーに提供する。

この能力の実現にあたり、エム・データが保有する2006年以降に東京エリアで放送された全地上波放送局の24時間放送番組データ(1日あたり約300番組と約3000の話題)、CMデータ(1日あたり約4000本)、そして2015年以降に同エリアの同放送局の全番組内で紹介された商品、レストラン、ホテルなどに関する商品やサービス(1日あたり約600件)に関するデータを活用する。

また、りんなとユーザーのやりとりや、ユーザーの感情を分析、りんなの会話能力に随時反映については、大阪大学では、大学院情報科学研究科 マルチメディア工学専攻ビッグデータ工学講座(鬼塚研究室)の荒瀬由紀准教授が中心となり、ユーザーの感情をポジティブ、ネガティブ、あるいは複雑なマトリックスに分類したうえで、エム・データが提供するTVメタデータをベースに、ユーザーがテレビ番組や芸能人に対して抱く感情を人工知能がどのように把握できるかについて研究する。

分析のイメージ(構文解析して得られる構文木において、各フレーズのsentimentを推定。深層学習を用い、ボトムアップにsentimentが構文木上を伝播していくモデル)

さらに、マイクロソフトがグローバルで展開している産学連携プログラム「CORE連携研究プロジェクト」の1つとして、マイクロソフト リサーチと連携し、ユーザーの感情に対して人工知能の適切な返答はどうあるべきか、どのような返答をすることでユーザーと人工知能が感情を共有しやすくなるのかについても研究・分析。研究成果は、日本マイクロソフトが「りんな」の会話能力に随時反映していくほか、分析結果の詳細を2017年以降に論文としての発表を予定している。