ルネサス エレクトロニクス(ルネサス)は12月7日、16/14nm世代以降のフラッシュメモリ内蔵マイコン向けにフィン構造の立体トランジスタを採用したSG-MONOSフラッシュメモリセルを開発したと発表した。SG-MONOS技術は車載応用可能な信頼性を有し、同社は現在、同技術を適用した40nm世代マイコンを量産中、28nm世代マイコンを開発しているが、今回の研究開発により16/14nm以降の世代までスケーリングが可能な見通しが立った。

先進運転支援システムに代表されるクルマの自動化やIoTを介したスマート社会の進展に伴い、より微細なプロセスを用いた最先端マイコンが求められている。そのため、40/28nm世代よりさらにプロセス世代を先どりした、16/14nmのロジックプロセスをベースにした混載フラッシュメモリの開発が必要とされている。16/14nmロジックプロセスでは従来のプレーナ構造のトランジスタでは微細化に限界が出てきたため、新しくフィン構造を導入した立体トランジスタの採用により性能の向上と消費電力の抑制を図ることが標準となってる。

ルネサスは、今回開発したフィン構造のSG-MONOSメモリセルにおいて、書き込み/消去状態におけるしきい値電圧の変化および書き込み/消去速度が期待通りとなっていることを確認。フィン構造を採用したトランジスタでは、ゲートがチャネルを囲む構造となるため、集積度を上げるために平面的な活性領域幅を大幅に縮小した場合でも、大きな駆動電流を確保できる。また、ゲート制御性の向上による、しきい値電圧ばらつきの著しい改善が見られ、フィン構造のSG-MONOSメモリセルが次世代のフラッシュメモリに要求されるランダムアクセス200MHz超の高速読み出しや搭載メモリの飛躍的な大容量化に応える特性を有することが示された。

フィン構造ではフィン先端部の電界集中によりデバイス特性の劣化や経年変化が顕著になる可能性が指摘されている。この電界集中は特に書き込み動作開始直後に顕著となるため、書き込み電圧を低い電圧から段階的に上昇させるステップパルスという書き込み手法を検討した。同手法はプレーナ構造でも報告されている技術だが、特にフィン構造の場合はフィン先端部の電界集中の緩和に対し、非常に有効に機能することがわかった。フィン構造SG-MONOSメモリセルの経年劣化が実際に減少していることで実効性を確認し、書き換え回数はデータ保存用フラッシュメモリで従来通りの25万回を実現した。

また、電荷トラップ型MONOSフラッシュメモリの特長である優れた電荷保持特性はフィン型構造でも損なわれることは無く、車載用途で重視されるデータ保持特性は、25万回の書き換え動作後に150℃で10年以上と、従来と同等の信頼性を維持している。

同社は、今回の成果について「SG-MONOS構造フラッシュメモリが、16/14nm世代以降の高誘電体ゲート絶縁膜とメタルゲート電極を有するフィン構造の最先端ロジックプロセスとの混載が容易であり、100Mバイト級のメモリを搭載し、28nm世代比4倍以上の処理性能を有する高信頼マイコンの実現に有望な技術であることを示すものです」とし、今後、大容量フラッシュメモリの動作確認を進め、2023年頃の実用化に向けて開発を進めるとしている。