IDC Japanは12月5日、「国内IT市場 産業分野別 企業規模別の2016年~2020年の予測」について発表した。これによると、2016年は銀行、小売、運輸/運輸サービス、公共/公益、建設/土木などでプラス2%台の前年比成長率を予測している。

2016年の国内IT市場規模は14兆6706億円、前年比成長率はマイナス0.6%を予測し、2015年~2020年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は0.8%、2020年のIT市場規模は15兆3653億円を予測。2016年は、特に勘定系システム刷新の大型案件が進行中である銀行と、オムニチャネル戦略への投資が下支えする小売業、日本郵政の大型IT投資や訪日外国人の増加への対応が進む運輸/運輸サービスや、一般サービス業において2%台の成長率を見込んでいる。

「国内IT市場 支出額予測、2015年~2020年」

また、電力およびガスの小売自由化に伴うシステム案件が見込める公共/公益、復興需要および2020年の東京オリンピック/パラリンピックに向けた案件に下支えされる建設/土木分野も2%台の成長を予測し、これらの産業はいずれも予測期間中プラス成長で堅調に推移していくという。

製造業においては、2016年初頭から続く円高傾向が設備投資の抑制傾向を招き、2016年と2017年は1%台の前年比成長率を予測しているが、2018年以降は回復し、第3のプラットフォームをはじめとした新技術への投資が進む見通し。情報サービスでは、大手銀行や小売業向けの大型案件対応で大手ベンダーを中心に堅調だが、業界全体としてはエンジニア不足の課題に直面していることも影響し、予測期間前半は前年比成長率1%台で推移すると予測している。

予測期間後半にかけては、多くの産業のIT投資が堅調に推移することに伴い、情報サービス業においてもサービス体制の強化のための投資が加速することが見込まれている。公的分野は、東京オリンピック/パラリンピックを見据えた社会インフラ関連の整備にIT支出が期待できることからプラス成長を想定。

2016年9月に実施したユーザー企業調査では、IT部門に与えられる取り組みとして「事業部との連携」という産業共通の課題がある一方、産業分野別に違いが表れ、製造業では「グローバル対応」や「デジタル変革の推進」がほかの産業より回答率が高く、金融業では「ITを活用した製品/サービス企画の推進」の回答率が高く、産業特有のIT活用領域が浮かび上がったという。

IDC Japan IT スペンディング マーケットアナリストの岩本直子氏は「ユーザー企業におけるITの取り組みが組織横断で推進されていく現状を踏まえ、ITサプライヤーは、より事業部門や経営層へのアプローチを強化し、IT部門のミッション遂行を支援すべきである」と述べている。