父親の育児支援を行っているNPO法人ファザーリング・ジャパンは11月25日、長時間労働の是正をテーマにした緊急フォーラムを開催。少子化ジャーナリストの白河桃子さんや、ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さんなどが登壇し、政府による労働時間の上限規制の必要性を訴えた。

左から、少子化ジャーナリストの白河桃子さん、ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さん、ワーク・ライフバランス代表取締役社長の小室淑恵さん

ママの育児を孤立させないために

長時間労働の是正を目的に開かれた今回のフォーラム。はじめに、ファザーリング・ジャパン代表理事の安藤哲也さんが、「ママの育児を孤立させない、子どもたちの世代に過労死を残さないというのが、父親の責任」とあいさつし、働く父親という視点から、長時間労働の問題について考えたいと、開催趣旨を語った。

次に、政府の働き方改革実現会議で民間議員を務める白河桃子さんが、会議の進捗について報告。白河さんによれば、年内は同一労働同一賃金、そして年明け1月には時間外労働のあり方を中心に議論が進む見込みだという。閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」には、"36協定の時間外労働規制のあり方について再検討を開始"という記載があると指摘し、「命を守るための規制は、絶対に行わなければならない」と主張した。

少子化、介護離職、過労死の解決へ

このあと、企業の労働時間削減に取り組むワーク・ライフバランスの小室淑恵さんが、労働時間の上限規制に反対する声に対して、意見を展開。「AIが代替するので、労働力不足にはならず、働き方を変える必要はない」という主張に対しては、「総務省によれば、AIにより、仕事の質が変化し、むしろ増える仕事もあるので、労働力不足は解決しない」と反論した。

また「単に労働時間に上限をつけるだけでは、生活費が減ってしまう」という意見については、必ずしも残業時間に比例して、残業代が稼げているわけではないと指摘。不払い残業や、残業時の夕食代、子育てとの両立にかかる負担などを考慮すると、過剰な残業をするよりも、月15時間ほどの残業の方が、実質的に実入りがいいケースもあるという。

「これまでは、少子化、介護離職、過労死などの社会問題について、絆創膏を貼るように対症療法をしてきた」と小室さん。「しかし本当は、労働時間に上限を入れ、長時間労働を是正することで、税金を使わずに、これらの問題を解決することができる」と主張した。

パネルディスカッションでは他にも、日本医師会認定産業医の亀田義人さん、ユニリーバ・ジャパン・ホールデングス人事総務本部長の島田由香さん、ブラック企業アナリストの新田龍さん、同友会産業医室の大室正志さん、ファザーリング・ジャパンの棒田明子 理事、塚越学 理事、川島高之 代表理事が登壇。最後に会場の参加者も含め、「労働時間に上限を設定」「インターバル規制の義務化」に賛同を表明し、フォーラムを終えた。