最先端共同HPC基盤施設(JCAHPC)は12月1日、超並列クラスタ型スーパーコンピュータ(スパコン)「Oakforest-PACS」の正式運用を開始したと発表した。

同システムは、ピーク性能25PFLOPSで、スパコンの性能ランキングであるTOP500の最新版(2016年11月)ではこれまで国内最高性能であった理化学研究所の「京」を抑え、世界6位、国内1位となった(LINPCK性能13.55PFLOPS)。

システムの制作は富士通が担当し、計算ノードにはIntelのメニーコア型プロセッサ「Xeon Phi 7250(開発コード名:Knights Landing)」と、相互結合ネットワーク「OmniPath」を搭載した同社の「PRIMERGY CX1640 M1」を8208台採用したほか、共有ファイルシステムに米DataDirect Networks(DDN)製の並列ファイルシステム(26PB)と高速ファイルキャッシュシステム(940TB)を採用することで、性能国内1位を達成したとする。

左と中央が計算ノードの「PRIMERGY CX1640 M1」。黒いパイプは水冷のためのもの。右下のボードがOmniPathベースのホスト・ファブリック・インタフェース。右はCX1640 M1を最大8台搭載できる2Uサイズのシャーシ「PRIMERGY CX600 M1」

また、大規模並列ファイルシステムを有しており、すべての計算ノードからすべてのファイルデータに高速アクセスが可能なほか、ファイル入出力性能1TB/s以上の高速ファイルキャッシュシステムの採用により、ファイル入出力性能を求めるアプリケーションの性能を向上させることも期待できるとしている。

Oakforest-PACSの運用予定は2016年10月から2022年3月までの5年半。稼動当初は性能確認の意味も含めたTOP500やHPCGの演算などが行われてきたが、正式運用開始となった2016年12月1日より2017年3月末までの期間は、メニーコアに向けたプログラムの開発や各種チューニングなどを含めた大規模ユーザーなどが活用した場合の問題の洗い出しを行う実験的運用、ならびにGordon Bell賞を狙うための超大規模問題の実行を行う特別プログラムを行った期間としており、2017年4月より対外的な活用のサポートを含めた形で、革新的ハイパフォーマンス・コンピューティング・インフラ(HPCI)をはじめとする各種共同利用・共同研究プログラムなどに提供されていくとする。

Oakforest-PACSが設置されているのは東京大学 柏キャンパス 第2総合研究棟(情報基盤センター)。システムの定格電力は4.2MWだが、実際には、そこまで電力を消費しないで運用できる見通しだという。ちなみにシステムはリースで、保守費用を含んだリース代金は5年半で総額72億円とのこと。CPUの冷却には水冷方式を採用しているが、メモリなどは空冷で冷やす必要があり、そうして排出された熱は分厚いヒートシンクを介して排出される(中段最右の画像が裏面を開いた様子)。下段の左写真はCX1640 M1の搭載の様子。かなり高密度であることが見て取れる。下段の左から2番目の写真はラック側の水冷パイプの接続の様子。下段の右側2枚はDDNの高速ファイルキャッシュシステムと並列ファイルシステム

なお、最先端共同HPC基盤施設長(東京大学情報基盤センター長)の中村宏氏は、国内最高性能のスパコンとして、さまざまな科学技術計算のための重要インフラとなるとするほか、日本の次世代スパコンとして開発が進められているポスト「京」が稼動を開始するまでの重要なスパコン資源として、日本全体を牽引する役割を担っていければ、と抱負を語ってくれた。

左から、東京大学情報基盤センターの塙敏博 准教授、同 中島研吾 教授、最先端共同HPC基盤施設長(東大情報基盤センター長)の中村宏氏、最先端共同HPC基盤施設副施設長(筑波大学計算科学研究センター長)の梅村雅之氏、筑波大学計算科学研究センター 副センター長の朴泰祐氏