東武鉄道は1日、日光・鬼怒川地区のSL復活運転の列車名称発表会を南栗橋SL検修庫にて実施した。2017年夏の運転開始をめざすSL列車の名称はSL「大樹(たいじゅ)」に決定。ヘッドマークも披露され、蒸気機関車C11形207号機が自走する場面も公開された。

ヨ13785・ヨ8709を連結した蒸気機関車C11形207号機。「大樹」のヘッドマークを掲げ、南栗橋車両管区内を自走する

発表会では、日光観光大使も務める涼風花さんの書道パフォーマンスとともに列車名称がお披露目された。東武鉄道取締役社長の根津嘉澄氏は列車名称について、「日光を代表する日光東照宮から連想するのは徳川将軍家だろうと思います。『大樹』は将軍の別称・尊称としての意味を持っています。もうひとつ、『大樹』という言葉は東武グループが浅草・押上地区に建てた世界一の自立式電波塔、東京スカイツリーも想起させます。これらの意味から当社のSL列車の名称にふさわしいと考えました」と説明した。

SL復活運転の事業目的のひとつに「栃木・福島エリアをはじめとする東北復興支援・地域経済活性化」が挙げられており、根津氏はSL「大樹」の運転区間に関して、「当面は栃木県内となりますが、将来的には福島県内への乗入れも実現させたい」と述べた。

日光観光大使の涼風花さんもSL「大樹」に期待している様子で、「歴史があって魅力の多い日光・鬼怒川にSLが来たら、もっと楽しんでもらえるはず。都内からも近く、皆さんにとって身近なSLになると思います。鉄道に興味なかった方も興味ある方も、日光・鬼怒川に来るきっかけになってくれたら」と話していた。

涼風花さんの書道パフォーマンスで列車名称を発表。その後、ヘッドマークも披露された

SL検修員・機関士・機関助士も参加してのフォトセッション

SL列車名称発表会の後、C11形207号機はSL検修庫内から自走して屋外へ移動し、ここでヘッドマークが初公開された。「大樹」の文字は涼風花さんが揮毫(きごう)したもので、一時代を築いたSLの力強さを隷書体(れいしょたい)で表現したという。徳川家の家紋「三つ葉葵」をもとに、葵の紋をC11形らしく3つの動輪で表現したデザインも特徴。このヘッドマークを掲げたC11形207号機が南栗橋車両管区内を自走する姿も公開された。

SL「大樹」の機関士、大井川鐵道での経験が刺激に

東武鉄道はSL復活運転に向けて、JR北海道・秩父鉄道・大井川鐵道・真岡鐵道の協力の下、検修・乗務要員の教育・習熟訓練も進めてきた。この日、SL運転(自走)で機関士を務めた船田博美氏も、約10カ月間にわたり大井川鐵道で訓練を行ってきたという。今年3月に筆記試験に合格した後、実技訓練を開始し、6月には実技試験にも合格している。

機関士を務める船田博美氏

運転前の作業も入念に

SL運転では客車と並ぶ場面も

船田氏は訓練を振り返り、「SLは走る・止まるが毎日違う。蒸気の上がりも雨の日、寒い日、暑い日で全然違います。ブレーキも電車とは違う古いもので、なかなか思ったように止まらないこともありました」と話す。現在は運転技術も向上し、この日のSL運転でも快走を見せたが、今後も引き続き、運転開始に向けてプロジェクトチーム全員で訓練を重ねるとのことだ。大井川鐵道での経験も刺激となっているようで、「大井川鐵道ではお客さんと乗務員のふれあいがあり、お客さんも非常に喜んでいてリピーターになる方も多い。うちも2度3度と来ていただけるようにがんばりたいと思います」と話していた。

SL「大樹」は2017年夏以降、鬼怒川線下今市~鬼怒川温泉間(12.4km。所要時間は片道35分)にて土休日を中心に年間最大140日程度(1日3往復程度)の運転を予定している。JR北海道から借り受けた蒸気機関車C11形207号機をはじめ、車掌車2両(ヨ8634・ヨ8709)と客車6両(スハフ14-1・スハフ14-5・オハフ15-1・オハ14-1・オロ12-5・オロ12-10)も受入済で、今月にはJR東日本からディーゼル機関車DE10形1099号機を受け入れる予定だ。2017年4月頃から鬼怒川線にて試運転を開始し、夏の営業運転開始をめざす。

「大樹」のヘッドマークを掲げたC11形207号機などの外観と自走シーン