名古屋大学(名大)は11月30日、鹿児島県・桜島の噴気温度の遠隔測定に成功したと発表した。

同成果は、名古屋大学環境学研究科 角皆潤教授、中川書子准教授、産業技術総合研究所活断層・火山研究部門 篠原宏志首席研究員らの研究グループによるもので、11月26日付けの米国科学誌「Geophysical Research Letters」オンライン版に掲載された。

桜島のような活火山の火口には、危険で近づくことができないため、火山活動の現状把握や噴火予測に火口の温度を利用することができない。

そこで今回、同研究グループは、火口から放出され風下側に流れてきた水素ガスの重水素同位体含有率が、放出される直前の温度を反映して変化する性質に着目。セスナ機を使って水素ガスを採集し、このなかに含まれる重水素同位体の比率を精密に測定した。

この結果、水素ガスが大気中に放出される直前には少なくとも930℃を超えており、同火山のマグマに匹敵する高温状態にあったことが明らかになった。つまり、観測が行われた2014年の時点では、マグマが火口直下に迫っていたことがわかる。

同研究グループは今回の成果により、火口に近づくことができない活火山でも、火口温度が遠隔から推定できるようになったため、今後は火山活動の現状把握や将来予測に活用できるようになると説明している。

噴煙中の水素ガスを利用した火口温度遠隔測定法の原理。噴煙中の水素ガスの重水素同位体含有率(HD/H2比)は、400℃未満に急冷される直前にH2Oと同位体交換平衡に達していたときのHD/H2比を保持している。この値は温度で決まるため、急冷される直前の温度を求めることができる