国立がん研究センター(国がん)、Preferred Networks(PFN)、産業技術総合研究所(産総研)は11月29日、人工知能(AI)技術を活用した統合的ながん医療システムの開発プロジェクトを開始すると発表した。

同プロジェクトは、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)における「イノベーション創発に資する人工知能基盤技術の創出と統合化」研究領域に採択されたもの。最初の2年4カ月で同事業が求めるProof of Concept(POC:概念実証)の取得、5年後の実用化を目指していく。

がん医療に伴うAI開発においては、電子化・構造化されたデータだけでなく、さまざまな非構造化がんデータベースの構築と、その多彩なデータベースを解析できる機械学習・深層学習技術の開発が必要となる。

そこで同プロジェクトでは特に、国がんが保持するクリニカルシークエンス(ゲノム)データ、ヒストン修飾を中心としたエピジェネティクスデータ、microRNAおよび血液検査データ、医用画像データに重点を置き、AIに対応した多次元データベースを構築。国がんに派遣された産総研とPFNのスタッフがデータ解析を実施する。これにより、より正確ながんの診断、個々のがん罹患者にあった治療法の選択、創薬などへ応用していきたい考えだ。将来的には、ヘルスケア産業や在宅医療への導入も検討していくという。

同プロジェクトの概念図

個々の課題に対する戦略

国立がん研究センター研究所長の間野博行氏は、「医療分野でのAI技術は大きく期待されているが、日本は海外に後れを取っている。今回のプロジェクトでは、日本の"ベストオブベスト"な人たちを集めた。日本の英知を生かして、産学官一体で追いついていきたい」とコメントしている。

左から、Preferred Networks 副社長 岡野原大輔氏、Preferred Networks America 最高執行責任者 大田信行氏、同プロジェクトの研究代表を務める国立がん研究センター研究所 がん分子修飾制御学分野長 浜本隆二氏、同研究所長 間野博行氏、産業技術総合研究所 人工知能研究センター長 辻井潤一氏、同センター 機械学習研究チーム長 瀬々潤氏