トヨタ自動車(トヨタ)は11月24日、リチウム(Li)イオン電池が充放電する際の電解液中のLiイオンの挙動を観察する手法を開発したと発表した。

Liイオン電池においては、充放電によって電極や電解液中のLiイオンの偏りが発生することが知られている。この偏りは、電池の使用領域を制限し、電池の持つ性能を最大限引き出せる領域が減少する原因のひとつとなっているが、これまでの手法では製品の環境・条件と同一の状態で電解液中のLiイオンの挙動が確認できないため、そのメカニズムは不明となっていた。

今回トヨタは、大型放射光施設「SPring-8」の豊田ビームラインにおいて、レントゲン装置の約10億倍の大強度X線を用いることで、0.65μ/pixの高解像度かつ100ミリ秒/コマの高速計測を可能とした。

また、多くのLiイオン電池で使用されているリンを含む電解液ではなく、重元素を含む電解液を使用し、Liイオンが電解液中を移動する際に結合するリン含有イオンを重元素含有イオンに置換することで、X線透過後の撮影画像における影の濃淡を強くさせることに成功。重元素の挙動を観察することにより、電解液中で重元素と結合しているLiイオンの動きを観察することができるようになった。

以上により、製品同等の電池(ラミネートセル)を使用し、実際に使用される環境・条件と同一の状態で、充放電の経過とともに電解液中のLiイオンの偏りが生じるプロセスをリアルタイムで観察することが可能となる。

同社は今後、正負極やセパレーター、電解液の材料や構造、電池の制御の違いなどによるLiイオンの挙動を観察し、電池性能低下のメカニズムを解析することで、搭載車両の航続距離や電池寿命といった電池の性能・耐久性向上に向けた研究開発につなげていくとしている。

今回開発された観察手法