東北大学、国立天文台などは11月22日、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC)」が撮像したデータのなかから、銀河系に付随する衛星銀河を新たに発見したと発表した。

同成果は、東北大学天文学教室 千葉柾司教授、大学院生の本間大輔氏、上海天文台、国立天文台、プリンストン大学などのメンバーからなる国際研究グループによるもので、11月14日付の米国科学誌「The Astrophysical Journal」オンライン版に掲載された。

銀河系に付随する衛星銀河はこれまで50個近く同定されており、そのうち光度が暗く小さな矮小銀河と分類されるものは40個程度発見されている。しかし、これまでの観測では、口径2.5m~4mの中口径望遠鏡が使われてきたため、太陽に比較的近いものやあまり暗くない矮小銀河だけが同定され、銀河系ハローの外側にあるものや、光度が非常に暗い矮小銀河は見落とされてきた。

今回、同研究グループは、8.2m大口径を持つすばる望遠鏡と超広視野焦点カメラHSCの組み合わせによる観測データを系統的に調べることで、おとめ座(Virgo)の方向に銀河系に付随する矮小銀河を発見。これを「おとめ座矮小銀河I(Virgo I)」と名付けた。

Virgo Iまでの太陽からの距離は28万光年。可視での絶対等級は-0.8等級と非常に暗く、半径は124光年と空間的に広がっており、同じ程度の明るさを持つ球状星団に比べて大きいという。これまでに見つかっている矮小銀河で最も暗いものは、-1.5等級の「Segue I」、0.0等級の「くじら座II矮小銀河 Cetus II」であり、Virgo Iは最も暗い矮小銀河のひとつであるといえる。

千葉教授は、「太陽から遠い距離にあって銀河系ハローと呼ばれる広い空間領域には、未発見の暗い矮小銀河がたくさん存在している可能性があります。これらが実際どのくらいあって、それぞれどのような性質をしていることを調べることによって、銀河系がどのように形成されてきたのか、またその過程でダークマターがどのように関わってきたのか、重要なヒントが得られるものと期待しています」とコメントしている。

左:Virgo Iの位置 右:赤経・赤緯それぞれ0.1度角における、Virgo Iに含まれる恒星の密度分布。青→白→黄→赤となるに従って恒星の密度が高くなっている (C) 東北大学/国立天文台