富士通は11月21日、大阪大学やScalityとコールドデータストレージに着目した大陸間データセンター連携の共同実証実験を、2016年11月から2017年12月まで実施すると発表した。

コールドデータは、ほとんどアクセスや更新されることのないデータ。現在、データセンター間のデータ連携を行うためには、データ遅延が小さい近距離での同期通信型による連携を取る方式と、遠距離での非同期通信によりバックアップを取る方式が採られているが、最近では、IoTやAIでの適用などを背景に、画像および映像系を中心のコールドデータが半数を占めるようになり、新しいデータの蓄積、および複数拠点間でのデータ共有へのニーズが高まっているという。ただ、複数拠点間のデータセンター連携の実現に向けては、データセンター間でのデータ同期の実現や、読み出し時の応答速度の向上などが課題となっているという。

そこで本実証実験では、分散コンピューティング環境で活用されているScalityのCRDTというデータ共有技術を応用して、コールドデータを各大陸にあるデータセンター間で複製することにより、スループットの向上や、対災害性、個々のデータセンターの内部冗長を排することによる低コスト化に優れた、遠隔地間連携ストレージ基盤を構築し、その効果などを検証する。

3社は、産学連携のコンソーシアムを2016年4月に設立し、日欧の実証実験パートナーと共に、大阪大学サイバーメディアセンター内のデータセンターとパリのアンテメタ社が所有するデータセンター間で実証実験を行う。

具体的には、近距離のデータセンター間やスタンドアロンのデータセンター内部でのみ実現していたデータの階層化と冗長化を、大陸間のような遠距離で実現するGeo Replicationシステムを開発。頻繁に更新されるホットデータ、更新頻度の低いウォームデータに加え、ほとんど更新されないコールドデータを複数種類のストレージ・デバイスへ階層化して保存することにより、全体スループットと応答性、低コスト化、長期保存の機能をシステム全体で実現する。

今回の実験において大阪大学は、膨大な量のデータ管理を実現するストレージ用ソフトウェア「Scality Ring」とコールドストレージ間のデータ階層化制御を担当。Scalityは「Scality Ring」によるストレージ機能と遠距離サイト間でのデータレプリケーションを担当。そして、富士通は全体プロジェクト管理、ホット、およびコールドストレージ装置、アーカイブデータ高速検索システムを担当する。

3者は2017年3月末までに基本動作の確認を行い、2017年度に本実証における研究成果の論文発表を行うという。また、並行して2017年4月から2017年12月の期間、日欧の共同実証実験パートナーと共に、具体的なアプリケーション、様々なタイプのデータでの利用実験を行うという。