米ネバダ州ラスベガスで11月15日から17日(現地時間)まで開催されている、米オートデスクの年次イベント「Autodesk University 2016」。初日の基調講演では、CEOのCarl Bass氏が「チーム単位で利用する製品の開発に注力する」との方針を発表した。"チーム単位で利用する製品"とは、データベースの一本化を通じてコラボレーションを促進する製品のこと。より具体的に言い換えれば"クラウドベースの製品/サービスに軸足を置いていく"ということになる。というわけで、本稿では同社のクラウド製品に関し、3D CAD「Fusion 360」を中心に、Autodesk University 2016で明かされた新情報を見ていく。

Fusion 360の新機能

まず、クラウドベース3D CAD「Fusion 360」では以下の新機能が発表された。

  • ブラウザ版: デスクトップPC、タブレット、スマートフォンなどさまざまなデバイスでプロジェクトへのアクセス可能に
  • プリント基板(PCB)設計機能: さまざまな種類のPCBファイルをクラウド上のライブラリから選択して、設計に組み込めるようになる
  • ジェネレーティブ・デザイン機能: 重量、寸法、コストなどを入力し、それを満たす設計データが生成される。形状最適化に加え、ラティス構造にも対応
  • 板金設計機能: フランジ加工、曲げ加工、フラットパターンに対応

ブラウザ版ではモバイルデバイスでの作業が可能に

PCB設計機能

ジェネレーティブ・デザイン機能による形状最適化

板金設計はユーザーから要望が多かった

このほか、11月9日には5軸、4軸CAMに対応したほか、解析エンジンが同社のNastranに変更されるなどアップデートがどんどん行われており、クラウド製品ならではの展開を見せている。

「Fusion 360」はクラウドベース3D CADとして言及されることが多いが、設計にとどまらず解析、製造など、製品開発のあらゆる工程に対応するプラットフォームと化している。ジェネレーティブ・デザインのラティス構造対応は同社の3D CAD「Inventor」に先駆けてFusion 360に実装されるほか、ブラウザ版の提供により時間や場所、デバイスを選ばずに作業可能とするなど、高い計算能力、データベースの統合といったクラウドの特長を活かして、ユーザーにとってより効率的かつ柔軟な開発環境を実現している。

なお、日本では新機能のうちブラウザ版と板金設計が2017年3月までにリリースされる見込みで、プリント基板設計、ジェネレーティブ・デザインの提供開始については未定。

BIM360の新機能以上に注目を集めた新プロジェクト「Quantum」

クラウドベースBIMソリューション「BIM 360」では、AndroidデバイスおよびRFI(Request for Information:情報提供依頼)に近々対応する。また、同社のBIM「Revit」との統合が進められているほか、マシンラーニングによりクラウドの情報からプロジェクトの潜在リスクを可視化する「Project IQ」のパイロット版が発表された。

またBIMでは、新しいクラウドソリューション「Quantum」の開発がスタート。現時点で詳しい情報は明らかとなっていないものの、設計に変更が発生した際に、構造設計やファブリケーションなど、プロジェクトに関わる各担当者と設計変更をリアルタイムで共有できるという。

「BIM 360」では新プロジェクト「Project IQ」のパイロット版参加企業を募集

「Quantum」のイメージ図


これらの情報はイベント2日目の基調講演でアナウンスされた。講演時間のほとんどがクラウド製品に充てられたことからも、クラウド製品に対するオートデスクの本気度が伺える。なお、同社は「Inventor」「Revit」など従来製品にも引き続き投資していくとしている。